『鬼滅の刃』が多くの共感を得るのは単なる勧善懲悪物語ではなく「鬼殺隊」「鬼」のそれぞれの家族愛や人生の悲哀が描かれているからでしょう。安芸高田市職員だった著者が投稿した物語が角川春樹小説賞を受賞して満を持して発売された本書も、戦国の世に繰り広げられた毛利軍と尼子軍の戦いが、それぞれの視点から描かれています。

争いの結果は史実を見れば分かる事ですが、歴史小説として面白いかどうかは史実に登場する人々の呼吸や鼓動、土や風の匂いが感じられるかどうかにかかっています。本書はその点で小説賞の名だたる選考委員が絶賛する、読み始めたらページをめくる手が止まらない抜群の描写がされています。

中国地方を舞台にした戦国の争いを広島出身の著者が描いた渾身のデビュー作をぜひ！私はもう続編を期待しています。