デビュー作『ぼぎわんが、来る』（角川文庫）を単行本刊行時に買って、驚愕して以来、澤村伊智さんのファンです。
『ぼぎわんが、来る』は「来る」というタイトルで映画化され、ポップなホラー映画としてもかなり話題になりましたが、原作は実に正統的な「怪談話」でした。澤村さんは、「ホラーミステリ」というか、「ミステリ怪談」の名手として、独特のポジションを確保していると思います。ミステリ寄りな構成の『予言の島』（角川文庫）、『邪教の子』（文藝春秋）でも、かなり怖い仕掛けが張り巡らされており、二度読み必至です。

そんな澤村伊智さんの最新刊が『怖ガラセ屋サン』（幻冬舎）。今回は「こわがらせやさん」の存在を共通テーマにしつつ、「怪談を語る」人々に降りかかる恐怖を描いた短編集です。
・母子家庭の母がオークションサイトでパワーストーンを買った直後、高額当選の宝くじを拾ったことをきっかけに、スピリチュアルの沼に嵌ってしまった。貧乏家庭なのにどんどんお金を使い込んでしまい……「救済と恐怖と」
・ふとしたきっかけで、友達だった子をいじめ始めた。教師がいじめを告発し、クラスの雰囲気が変わったが、元凶が同じグループの僕たちとは気づいていない。その直後、いじめらていた子が車に轢かれて死んだ……「子供の世界で」
・４人の怪談師が次々に怖い話を披露する怪談ライブ。４人のあと、会場にいた女性がさらに怖い話を語り始めた……「怪談ライブにて」
など全７話で構成されていますが、いずれも、全く予想外のところからカウンターパンチのような恐怖が押し寄せてきます。あっ！と何度もびっくりしました。
そして全体を締める「こわがらせやさん」とは……実際に読んで怖がってください。