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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2021/11/24 更新

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井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

オンボロやしきの人形たち

著者:フランシス・ホジソン・バーネット

出版社:徳間書店

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オンボロやしきの人形たち

小公女
小公子
秘密の花園
消えた王子

わたしの魂の三分の一はこれらの物語で作られたといっても過言ではない。
そしてまさか。まさか…!バーネットの新しい本を読むことができるなんて!!
さすがお誕生月です、世界よ祝福をありがとう☆☆☆

初邦訳されたこの物語は、ある女の子の子どもべやにある『オンボロやしき』に暮らす6人の陽気な人形たちの暮らしから始まります。
ある時、子どもべやに新しい人形の家とぴかぴかの貴族の人形たちがやってきて、オンボロやしきはへやのすみに押しやられて忘れられてしまいますが…。

表紙も子ども向けでかわいい絵、挿絵もたくさんで妖精の女王が語り手の楽しい物語、やさしい楽しい童話なのかな?とまったくのノーガードで読み始めてしまった。
ちょっとしたお菓子のつもりでつまんだこの本に、心をわしづかまれ、ぶん投げられました。感動の宇宙を漂っています。

人形の性格って、人形を愛してたくさん遊んだ子どもたちによって芽生えたものだと思います。
オンボロやしきは今の持ち主シンシアのおばあさんが7歳の時にもらった、長く受け継がれたものです。
幾人もの子どもたちに愛され楽しませてきたのだろう、どれだけの子どもたちのきらめく笑い声をあびたら、こんなに気持ちのいい人形たちになるのだろう。
令和の世でも常識ですが、人形、ぬいぐるみは生きています。わたしたちの見ていないところで彼らは独自の人生を営んでいます。(※事実です)
人形たちは子どもから忘れられても幸せにやっていますが、やはり子どものために生まれた存在で、子どもの持つ想像力という強い力に翻弄されもします。

どんなにオンボロになっても、いくつもの傷を負っても、今の状況から楽しいことを見つけ出しそこにピントを合わせる。
足りないものは想像力で補う。
苦しみに立ち向かうために必要なものは、おなかの底から湧き出してくる明るい笑い声。
愛は、見返りなど求めない、ただ差し出すことが喜びだと。
ちっぽけな人形たちは何もかもを知っています。幸せの意味も。

短いお話でも、小さい子向けでも、とてつもなくバーネットです。
ひざの上に載る本はこんなに軽く小さいのに、今わたしが見た超大作はなんだろう…。
はっ!映画?映画か?…映画化!!!
本当に見たし、聞いたんです。
彼らが躍る姿や、小さないくつもの笑い声を。
これ、映像でも見たい!

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