おすすめの本RECOMMEND
あなたも3分でミステリ通になれる(仮)
政宗九がおすすめする本です。
某店店長でもあり、ミステリマニアとしても知られる「政宗九」によるミステリコラム。
これを読めば、あなたもミステリ通です。
2021/12/05 更新
あなたも3分でミステリ通になれる(仮)
政宗九がおすすめする本です。
ノンフィクション
米澤屋書店
著者:米澤穂信
出版社:文藝春秋
年末になると、『このミステリーがすごい!』(宝島社)をはじめ、週刊文春や「ミステリマガジン」の「ミステリが読みたい!」、また『本格ミステリ・ベスト10』(原書房)などなど、今年のミステリの傑作を振り返ったランキングがいろいろ発表されます。
そこで上位に入った作品は年末年始にまた売れたりします。
近年特に売れるのはなんといっても「1位」作品。近年は複数のランキングの1位を同じ作品が独占し、「×冠!」みたいな売れ方でさらに売れたりします。
そんな中、今年、2021年のミステリのランキングを席巻しているのが
米澤穂信さんの『黒牢城』(KADOKAWA)。
「このミス」「週刊文春ミステリーベストテン」「ミステリが読みたい!」「本格ミステリ・ベスト10」の全てのランキングで1位となり、ここまでで四冠。
さらに同書は、「山田風太郎賞」も受賞されているので、「五冠」というすごいことになっています。
織田信長に叛旗を翻した荒木村重が籠城する有岡城で、荒木村重によって囚われの身となっている織田方の黒田官兵衛が謎を解く、「戦国時代の安楽椅子探偵もの」という新機軸に挑んだ作品で、時代ミステリの新たな傑作です。
『黒牢城』は既にかなり話題になっているので、このコラムでの紹介はここまで。
実は米澤穂信さんの2021年の著書で、私が超絶に傑作だと思っている作品がもうひとつあります。
それが『米澤屋書店』(文藝春秋)。
簡単に言えば、米澤さんによるミステリ小説ガイド、なのですが、採り上げられる作品のセレクト、読みどころを押さえた作品紹介、関連情報や「補足(コメンタリー)」に至るまで、隅から隅まで読み応えたっぷりのミステリガイドブックなのです。
基本的には今までに米澤さんが各媒体で発表されてきた小説関連のコラムなどを収録しているのですが、さらに原稿用紙120枚分の書下ろしが追加されているほか、柚月裕子さん、麻耶雄嵩さん、有栖川有栖さん、朝井リョウさんとの対談も収録されています。
私も含め、恐らく四十代くらい以上のミステリマニアたちが必ず通ってきた作品に、瀬戸川猛資さんの『夜明けの睡魔』(早川書房→創元ライブラリ)があります。私も同書の影響を受け、数多くの海外ミステリ作家に出会えた歴史的名著なのですが、『米澤屋書店』は、今の若い世代に向けて、新たなミステリマニアをたくさん生み出すほどの力のある作品だと確信しています。こちらには日本人作家作品も多く紹介されており、海外小説もたくさん載っているので、国内海外どちらのミステリにも詳しくなれるはず。
いま「若い世代」と書いてしまいましたが、もちろん、若くない(?)世代の皆様でも、ミステリに詳しくなりたいなあ、と思っている方に自信を持ってお薦めできます。
米澤穂信さんは今年(2021年)、作家デビュー20周年だそうです。この記念の年に、小説(『黒牢城』)と非小説(『米澤屋書店』)の大傑作を世に出された米澤さん、来年の活躍にも期待です。