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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2021/12/08 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


文庫

テムズ川の娘

著者:ダイアン・セッターフィールド

出版社:小学館

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テムズ川の娘

ONCE UPON A RIVER という原題も好きだ。
誰かが語りはじめるのを、すみっこの席について聞いていたい。
物語のうまれるその場所にわたしも立ち会いたい。

19世紀終わりのイギリス。おとぎ話と科学が同席する世界。
酒場に運び込まれた少女の死体。しかし彼女は酒場の大勢の客の前で息を吹き返した。
さまざまな目撃者によって語られる少女の奇跡の物語。
彼女の家族だと名乗り出る人々。彼女は誰なのか?

『奇跡の少女』という大きな謎に引き寄せられるように村の人々の秘密や傷あとが浮かび上がってきます。どんな人にも、わたしにも喜びとやりきれない様々な思い残しが川の流れるように次々訪れる。年月を経るとどんどんきつくなってくる。
そんな時に心を落ち着かせてくれるのは、『事実』よりも物語の中で奇跡のように語られる『真実』なのかもしれない。

奇跡、いいな。そんなもの一度くらい目撃したいな。

あと、川の流れを物語の間ずっと感じます。ちょっとふわふわと不安定なような、清涼なマイナスイオンを感じるような、なんともいえない読み心地です。

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