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本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!
2021/12/12 更新
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
コミック
特別じゃない日
著者:稲空穂
出版社:実業之日本社
12月は他の月とは違う。特別な感じがする。何といってもクリスマスという年間を通して最も華やかなイベントがあり、キラキラと輝いている。
言わば一年間というクラスのアイドルだ。それも大トリとして有終の美を飾れるトップアイドルなのだ。
「じゃない方」の私にとっては眩しすぎて、つい目を逸らしてしまいそうになるが…
だからと言って特別な存在を否定的に思っている訳ではない。ハレの日や目立つ人が持っている他人を明るく、元気にする力は、とても大切だと思っている。
花鳥風月に興味が出てきた私はYouTubeで、よそのお宅の小動物や赤ちゃんの成長記録を見ては癒されている。
一方で「#乃木坂ダンスプレイリスト」も見ている。「ロマンスのスタート」を踊る生田絵梨花さんは最高だと思う。目を逸らすどころか、見入ってしまう。一緒に踊りたくもなる。でも、いくちゃんは年内で乃木坂46を卒業するらしい。残念でならない。
来年どうしよう。この歳で推し変できるだろうか?
稲空穂・著「特別じゃない日」(実業之日本社)を読んだ。老夫婦から孫、バイト先の先輩、子持ち主婦、幼い兄妹、子ネコまで、小さな町の日常のなかにある優しく特別なきらめきを切り取ってつなげたマンガ『特別じゃない日』のコミックス第1巻。
私もこのコラムで書いてきたエピソードは、「特別じゃない日」のことばかりだ。だから本書にシンパシーを感じた。
― 歳を重ねるごとに、色々な経験をし、今目の前にあるものがなにより愛しく感じられるようになりました。その様な想いの中つけた「特別じゃない日」というタイトルは私自身としても好きなタイトルです。この本を読んだあとに、大事な誰かの顔を思い浮かべてもらえたら、何よりうれしいです。— 稲空穂
最初の「残したいもの」と最後の「ひとりじめ」がよかった。朗らかでよくしゃべるおばあさん。少し無口なおじいさん。「男は黙って…」、まさに昭和のオヤジだ。
でも、おじいさんは、おばあさんをよく見ている。おじいさんの「推し」は、おばあさんに違いない。おじいさんがスマホで盗み撮りしたおばあさんの笑顔の写真が、それを物語っている。
「誕生日一週間前」もいい。りょうたくんの誕生日は8月27日、1歳、2歳、3歳と誕生日ケーキのロウソクも増えていく。彼は指でケーキ屋さんにそれを伝える。翌年の2月、りょうたくんは指で「ロウソクは1本」と伝える。不思議に思うケーキ屋さん。彼の後ろで、お母さんは妹を抱っこしていた。りょうたくんの「推し」は、妹のひなこちゃんだ。
「おてがみ」、「スマホ世代」、「わらったおかお」もいい。「知らないきみ」、「理想のかんけい」、「#猫」もいい。あげていたら全部になる。みんな誰かを「推し」ている。そして誰かから「推されている」のだ。
さらに言えば、帯裏面の推薦文も。作家・宮下奈都さんは本書を「推し」ている。
もちろん私の「推し」は、来年も妻であることに変わりはない。まだまだ妻とのエピソードは、山ほどある。例えば…
でもそれは、あしたのこころだ!