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あなたも3分でミステリ通になれる(仮)

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政宗九がおすすめする本です。


某店店長でもあり、ミステリマニアとしても知られる「政宗九」によるミステリコラム。
これを読めば、あなたもミステリ通です。

2022/01/06 更新

あなたも3分でミステリ通になれる(仮)


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フィクション

新しい世界で 座間味くんの推理

著者:石持浅海

出版社:光文社

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新しい世界で 座間味くんの推理

ミステリのジャンルのひとつに「安楽椅子探偵もの」というのがあります。
探偵が事件現場の捜査や関係者への聞き込みをすることなく、事件の詳細を聞くだけでその真相を見抜く、というタイプのミステリです。
古くはバロネス・オルツィの「隅の老人」シリーズ、アイザック・アシモフの「黒後家蜘蛛の会」シリーズが有名。日本だと、高木彬光さんの神津恭介シリーズのうち『成吉思汗の秘密』『邪馬台国の秘密』などの歴史ミステリや、北村薫さんの『空飛ぶ馬』に代表される「円紫さんと私」シリーズなど。変わり種として、松尾由美さんの「安楽椅子探偵アーチ―」シリーズはなんと、「安楽椅子」そのものが喋って事件を解決する、文字通りの「安楽椅子探偵」です。
映像化された作品だと、綾辻行人さんと有栖川有栖さんが共作した、テレビドラマの「安楽椅子探偵」シリーズもありました。映像作品ならではのトリックが楽しめたものです。

さて、そんな「安楽椅子探偵」もので、最近立て続けにいい作品に出合いましたので、ここで一気に紹介しましょう。
笛吹太郎さんの『コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎』(東京創元社)は、アシモフの「黒後家蜘蛛の会」シリーズへのオマージュのような作品集。上質なミステリ短編集です。
大山誠一郎さんの『記憶の中の誘拐』(文春文庫)は、かつてドラマ化もされた「赤い博物館」シリーズ。時効になった未解決事件の資料を読み返し、まったく予想外の真相に辿り着くシリーズで、それぞれにオリジナリティあふれるトリックが楽しめます。

そして今回メインで紹介するのは、石持浅海さんの『新しい世界で 座間味くんの推理』(光文社)
「座間味くん」は石持さんの代表作のひとつ『月の扉』(光文社文庫)事件で、ハイジャック事件に巻き込まれながらも事件を解決に導いた、名無しの素人名探偵。「座間味くん」は名前ではなく、この事件でハイジャック犯から呼ばれた「愛称」です。
この座間味くん、『月の扉』以降もシリーズとして登場し、謎を見事に解いていきます。
その最新作が『新しい世界で』。『月の扉』事件で人質にされた乳児がいるのですが、成長して女子大生になっており、その事件に携わった警察官の大迫さんと「座間味くん」と3人で定期的に会食する仲になっています。大迫さんは今や警視長。座間味くんもすっかり中年のおじさんです。
会食中に、大迫さんが過去に体験した「謎」を紹介、それについてあれやこれや話が盛り上がりますが、座間味くんが全く予想外の一言を漏らし、大迫さんの「聞こうか」を合図に、その推理に至った理由を披露する、という形式のミステリ。これも「安楽椅子探偵もの」と言っていいでしょう。
最終話でも不意打ちのようなサプライズが待ち受ける、読後感の爽やかなミステリでした。2022年のお薦め第一弾です。
そして、「座間味くん」は、いまだに、「座間味くん」のままでした。

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