バンド「はっぴいえんど」解散後、『木綿のハンカチーフ』『赤いスイトピー』『硝子の少年』など2,100曲以上の作詞を手掛けた松本隆氏。昨年は作詞家生活50周年を記念したアルバムや著書が次々発売になり、その中でも本書は彼の詩の背景と創作の秘密をインタビューから紐解いたものだ。

表現したい事への視点や距離感、陰影の付け方・バランスのとり方などが名曲群を実例に細やかに解説され、歌詞に限らず特に俳句や短歌、そしてSNSでの発信など短い文章を綴る時の教科書になりそうだ。ピアノのバイエル教本へのオマージュを感じる装丁も美しい。

大滝詠一『君は天然色』という華やかな名曲が生まれた背後に、彼を襲った深い悲しみがあったことを本書で知り驚いた。だからこそ今でも輝き続けるのだろう。『ルビーの指環』だってそうだ。「指輪」じゃなく「指環」。彼の日本語へのこだわりを感じたい人は是非。