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あなたも3分でミステリ通になれる(仮)

あなたも3分でミステリ通になれる(仮)

政宗九がおすすめする本です。


某店店長でもあり、ミステリマニアとしても知られる「政宗九」によるミステリコラム。
これを読めば、あなたもミステリ通です。

2022/03/06 更新

あなたも3分でミステリ通になれる(仮)


政宗九がおすすめする本です。


フィクション

華麗なる誘拐

著者:西村京太郎

出版社:河出書房新社

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華麗なる誘拐

これを書いているのは2022年3月6日ですが、3月3日に作家・西村京太郎さんが亡くなられたことが発表されました。91歳でした。
謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

実は私は西村京太郎さんがきっかけでミステリマニアになったので、西村京太郎さんの作品にはいろいろ思い出があります。
「トラベルミステリー」という小説のジャンルを確立したことは西村さんの最大の功績だと思いますが、トラベルミステリー発表前にも多彩な傑作ミステリを多数発表されている、すごい作家さんなんです。

江戸川乱歩賞を受賞された『天使の傷痕』は社会派ミステリ、
初期傑作のひとつ『D機関情報』はスパイ小説、
ユーモアミステリ『名探偵なんか怖くない』に始まる「名探偵」シリーズ4部作など、様々なタイプのミステリを書かれています。
大きなものを消すのも得意なのが西村ミステリ。タンカーを丸ごと消す『消えたタンカー』、読売ジャイアンツの選手・監督(当時は長嶋茂雄監督!)を全員消す『消えた「巨人軍」』、列車一編成を乗客ごと消す『ミステリー列車が消えた』などがあります。

ガチガチの本格ミステリで評価が高く有名なのが、『殺しの双曲線』。双子をトリックに使っていますよ、と冒頭で明かしておきながら、それでもアッと驚くようなトリックに騙されます。
トラベルミステリーも初期作品は面白いものばかり、特に、記念すべき第一作『寝台特急殺人事件』や、日本推理作家協会賞を受賞された『終着駅殺人事件』は忘れられません。
事件現場を無人島に再現させて再検証をする(いや、無理やりさせられる)『七人の証人』も印象的です。

私が特に偏愛する西村京太郎作品は、なんといっても『華麗なる誘拐』(河出文庫)です。
日本国民1億2千万人を誘拐した。身代金は5千億円――首相官邸に掛かってくる脅迫電話。最初はまともに相手にしませんでしたが、実際に死者が出たことで犯人グループが本気であることが分かります。彼ら「ブルーライオンズ」の狙いとはなにか……。無差別殺人が起きるような時代を予見し、あの「地下鉄サリン事件」よりも遥かに早く、1977年に発表された作品は、今でも全く古びていません。

西村京太郎ミステリは不滅だ、と思います。ぜひ読んでみてください。

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