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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2022/03/16 更新

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井上いつかがおすすめする本です。


文庫

男たちを知らない女

著者:クリスティーナ・スウィーニー=ビアード

出版社:早川書房

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男たちを知らない女

2025年11月、英国で発見された伝染病。
感染しても女性は発症せず、症状の出る男性の致死率は90%…!!!

夫が、息子が、父が、兄弟が、次々と病にてたおれてゆく。
世界中に『男』と『女』の分断の刃が振り下ろされる。こんなにも容赦なく性別による線が引かれ、今までの世界で隔てられていたものがあらわになる。

電車の運転士、医師、政治家、警察官、消防士…すべての人員が圧倒的に不足する。
男性の人口は10分の1となり、性別による区別が意味のないものになる。
世界を作っていた『男たち』がいなくなり、『女』のそれぞれの個人的な戦いで、この大災害の物語が進んでゆきます。

感染を食い止める、ワクチンの開発、パニックや暴動…男たちが主人公ならばこの物語はもっと大きな流れを描くドキドキハラハラなストーリーになったかもしれない。

残された彼女たちは、男女のバランスが崩れた世界で、さまざまなものの蓋があいてしまうことと向き合い、ただの『人間』である自分だけのやり方で新しい世界を生きていきます。
彼女は医師で、警察官で、政治家で、科学者で、ベビーシッターで、学者で、新聞記者で、美容師で、看護師だった。

息つく暇もなくこの本を読み終えて、顔を上げると、いろいろな我慢や諦めや疲れが、本の外にも広がっていました。

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