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あなたも3分でミステリ通になれる(仮)
政宗九がおすすめする本です。
某店店長でもあり、ミステリマニアとしても知られる「政宗九」によるミステリコラム。
これを読めば、あなたもミステリ通です。
2022/03/26 更新
あなたも3分でミステリ通になれる(仮)
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フィクション
午前0時の身代金
著者:京橋史織
出版社:新潮社
「新潮ミステリー大賞」というミステリ小説の新人賞があります。
ミステリの新人賞といえば、「江戸川乱歩賞」「横溝正史ミステリ大賞」「このミステリーがすごい!大賞」などが有名で、それらに比べると知名度では若干負けるかも知れません。
しかし、「新潮ミステリー大賞」からデビューされた作家さんには、かなりクセが強い方が多い印象があります。
『サナキの森』で第1回目の新潮ミステリー大賞を受賞された彩藤アザミさんは、2021年に『不村家奇譚』という、それはそれは怖いホラーミステリを発表されて話題に(ついでに言えば、ツイッターの投稿が超面白いです。ぜひ見てみてください)。
『レプリカたちの夜』で第2回目の新潮ミステリー大賞を受賞された一條次郎さんは、その『レプリカたちの夜』からしてかなり個性的な作品でした(だって深夜の工場にシロクマが闊歩し、人間が溶けちゃうんですよ)。次の『ざんねんなスパイ』は73歳の新人スパイの物語など、似たような話を書く人が思い当たらないくらいの独特な作風です。
他にも、2021年『救国ゲーム』で話題になった結城真一郎さんも新潮ミステリー大賞の出身です。
さて、今年、第8回目の新潮ミステリー大賞の大賞作品として世に出たのが、京橋史織さんの『午前0時の身代金』(新潮社)です。
誘拐事件が発生し、身代金は10億円。その身代金を、クラウドファンディングで広く国民から集める、という斬新なアイデアが光っています。クラウドファンディングの期間はたったの24時間。タイムリミットは午前0時。果たして10億円は達成されるのか、そして事件はどうなる……?クライマックスの盛り上がりとサスペンスは、ページを繰る手が止まりません。
クセの強い作品が多い新潮ミステリー大賞受賞作の中でも、かなりエンタメに振り切った作品と言えるでしょう。