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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2022/04/13 更新

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井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

きみだからさびしい

著者:大前粟生

出版社:文藝春秋

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きみだからさびしい

大好きな彼女が、ポリアモリーだと言った。
彼女には圭吾と違って『本当の好き』がいくつもあるということ。
彼女と恋人同士になれる、けれど彼女にはほかにも恋人がいる。
どうする
どうなる
理解できる?
受け入れられる?
心は、なんていうだろうか。

どうして、ふつうじゃない、こんな苦しいものを読むの?
そう尋ねられてびっくりしてしまった。
ふつう。
わたしのこわいもの。
皆が平気でふつう、の上に立っているのを見るのもこわくてたまらない。
それがどれほどの薄氷かもわからないのに。

わたしが一番安心できるのは、石橋を叩き壊してその破片を手に取る時です。
ほら、こんなに薄かった、あぶないあぶない。
叩き壊すのにこんなに骨が折れるとは、これなら一生腰を据えても大丈夫だったかもしれないね。
『好き』がどんなに儚いものか、時にはこんなにも禍々しく変容するのか、自分のものでさえ絶対ではない『愛』がおそろしくてなりません。

なのに、大前粟生さんの本を読むと、わたしも足を乗せてみようかと血迷ってしまう。
たとえ粉々に砕けて落ちても、その先が見たくなってしまって困ります。

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