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本さえあれば、日日平安

本さえあれば、日日平安

長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2022/05/16 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


フィクション

一人称単数

著者:村上春樹

出版社:文藝春秋

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一人称単数

私の身長は170cm・・・すみません、嘘をつきました。実際は169cmでした。
高校生の時から40年以上、身長詐称を続けています。どうでもいいと思われるかも知れませんが、男子にとってこの差はとても大きいのです。女子に対しては特にそう。大げさではなく、たかが1cm、されど1cmなのです。

それが3年くらい前からでしょうか、定期健診で測ってもらうと「は~い、168cmですね~」と若い看護師さんから明るく、そして軽~く言われます。
「低くなっとるやん…」

そんな時は「もう一回ええですか?」と少しだけ背伸びして臨みます。でも「ちゃんとあご引いて、かかと付けて下さいね」と注意されて、やはり同じ結果となります。
「ズルはだめですよ」と叱られながらも、悪い気はしません。背が縮んだというショックは、娘くらいの年齢の女子に「こらこら」と笑いながらツッコんでもらえたことで、どっかに飛んでいきました。嬉しくて、ついニヤけてしまいます。

女子にウケようとする“あざとい”男子を見かけると、「しょ~もな」と軽蔑していました。でも、本当はうらやましいのです。
彼女たちを笑わしたい。雑学を披露して感心してもらいたい。過去の栄光や武勇伝を5割増しで語っては「すご~い!」と言って欲しい。
男子とはそんな生き物なのです。

初めて気になる女子が出来たのは小学六年生の時でした。
友だちのH君に打ち明けたら、「手紙書いてみたら」とアドバイスしてくれました。H君は市の中心部の繁華街に近い学校から転校してきた、ちょっと大人びたというか、ませた感じの子でした。

「でも、なに書いたらええん?」と聞くと、H君は「何なら代わりに書こうか」と言ってくれたので渡りに船とお願いしました。
彼がどんな内容の手紙を書き、返事はどうだったのか知りません。結局その女子と仲良くなったのはH君でした。二人が一緒に下校する姿を見てショックを受けました。
「まあ、よくあるパターンじゃな」といまなら思えます。

中学生になるとバスケ部に入りました。理由はコラム(山本甲士「ひろいもの」小学館・2013/07/08更新)にも書きましたが、もちろん女子がらみです。
ある日、練習が終わり部室に戻る時、陸上部が運動場に残していたハードルを見かけました。少し後ろを女子バスケ部員も歩いて戻っていたので、ちょっとカッコつけたくなりました。
もちろん自分では義経の八艘飛びのごとく、ひらりと飛び越えたつもりでしたが、足が引っ掛かり見事にこけました。後ろから来ていた女子バスケ部員はそれを見て大爆笑。好きだったあの子も笑っていました。指までさして。

その後も度々やらかしました。高校生で彼女ができたとき(森岡久元「十八歳の旅日記」澪標・2010/09/21更新)、初デートの食事は軽食喫茶での「焼きそば」でした。なぜそんなものを注文したのか自分でも不思議です。もちろん歯には青のりが・・・

大学生の時のデート(井上章一「大阪的」幻冬舎・2019/03/30更新)は、地下鉄梅田の駅で待ち合わせでした。私は出口を間違えました。もちろんスマホもない時代です。連絡は取れません。お互い人混みの中を30分以上探して、やっと会うことが出来ました。
出会えてホッとして、そして嬉しくて少し泣いていたので頭ポンポン・・・してもらいました、彼女に。

『一人称単数』(文藝春秋)は8つの物語が収録されている短編集です。村上春樹の小説を読むと、過去に好きだった女子、付き合っていた女子のことを思い出します。

すみません、格好つけました。ホントは思い出したいときに読み返す、と言った方が正解かも知れません。
なので今日も読みました。特に「品川猿の告白」がよかったです。

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