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2022/06/01 更新

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ノンフィクション

放送作家ほぼ全史

著者:太田省一

出版社:星海社

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放送作家ほぼ全史

ラジオ番組やテレビ番組の企画を考えて台本を作成し、時には出演者のセリフ回しまで考える。そしてしばしば、自らも出演したりする。日本で独自に進化、発展していった「放送作家」という特殊な職業の歴史を紹介し、代表的な放送作家の活躍を振り返ったのが太田省一『放送作家ほぼ全史』(星海社新書)です。

時代を作った放送作家の多くは、「放送作家」という職業の枠を越えた活動をしています。
作詞家としても活躍した永六輔、阿久悠、秋元康
作家としても活躍した五木寛之、青島幸男、井上ひさし、小林信彦
司会者として有名になった大橋巨泉、前田武彦
出演者の相方として有名になった高田文夫(「ビートたけしのオールナイトニッポン」)、高須光聖(松本人志との『放送室』)
脚本家としてブレイクした君塚良一(後述します)、三木聡(「時効警察」)
意外なところでは、三谷幸喜や宮藤官九郎も、放送作家の出身です。

それぞれの歴史やテレビ、ラジオだけでなく日本の芸能界に与えた影響の大きさは本書を読んでもらうとして、ここでは後の世を予見したようなエピソードをふたつ、紹介します。

萩本欽一の番組を構成していた放送作家グループ「パジャマ党」の一人だった君塚良一は、萩本欽一に「ドラマを書きたい」と志願したそうです。その時の萩本の答えは、
「うちは、お笑いとかドラマとかじゃなく、テレビを作ってるんだよ」「テレビってのは、ジャンルでものを作ってないの。テレビはテレビなの」「そのうちさ、ドラマだお笑いだなんて分けることなんかなくなっちゃうよ。ドラマと笑いがくっついた番組がいっぱいできるような時代が来るから」(177~178ページ)
この先見の明、恐るべし、と思います。
君塚はそれを受けてか、ドラマに笑いを取り込んだ脚本を書きます。
それが、明石家さんま主演の『心はロンリー気持ちは「…」』シリーズ。一見真面目な恋愛ドラマに、笑いの要素を入れまくった作品でした。
そして君塚良一は、後に「冬彦さん」ブームを生んだ「ずっとあなたが好きだった」や、「踊る大捜査線」の脚本家として大ブレイクするのです。

もうひとつは、たけし軍団の一員でありながら放送作家でもあるダンカンが1990年代、バラエティの未来について聞かれた時に答えた発言。
「テレビのチャンネルが増え、ほとんどの情報が知り尽くされた結果、最終的に自分の姿を24時間見せる「自分チャンネル」しかなくなるのではないか」(204ページ)
現在の、誰もが配信でき、誰もがスターになれる(かも知れない)YouTubeの時代を予言していたのかも知れません。

ちなみに、本書ではチラッとしか登場しませんが、私が一番思い入れのある放送作家は、コサキン(小堺一機&関根勤)のラジオを長年構成し、テレビでは「笑っていいとも」「ごきげんよう」「SMAP×SMAP」などを手掛けた鶴間政行です。「ごきげんよう」の「サイコロトーク」の発案者としても有名です。なお「SMAP×SMAP」には、あの鈴木おさむも携わっており、アイドルにコントをさせるなどの画期的な仕事をしています。
人気番組の裏に放送作家あり、なのです。

(人名があまりにも多いため、全て敬称略とさせていただきました。ご了承ください)

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