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本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!
2022/06/11 更新
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
フィクション
コミックエッセイ 本屋図鑑 だから書店員はやめられない!
著者:いまがわゆい
出版社:廣済堂出版
啓文社西条店には2人のイケオジがいる。店長MとスタッフNのことである。
イケオジとは「イケてるオジさん」の略で、対象年齢は40代から60代ということだ。まさに彼らは今が旬、脂の乗り切ったイケオジだ。
その脂の大半を、お腹まわりに乗せてはいるが・・・
MとNは苗字のイニシャルだが、どちらがMでどちらがNか混乱するようだ。実際に「ややこしいな!」と思われた方もいるらしい。
といっても、それは彼らのせいではない。だが「噂の刑事」トミーとマツ、もしくは「あぶない刑事」タカとユージのようなイカした(その言い方が既にイケてないが)呼び名は無いものだろうか?
そこで苗字ではなく名前(ファーストネーム)で考えてみた。名前の最初の漢字は店長Mが政、スタッフNが正。読み方はどちらも「まさ」。
政と正、まさ&まさ、マサandマサ。これって、どこかで聞いたことがあるような…、なんでだろう♪
他に「Wまさ」という表現もある、と髪をかきあげながら気づいた。その理由が分かる人は、だぶんアラフィフだろう。
しかし「まさ」や「マサ」だと、言い方によっては江戸っ子の職人のようでもある。こんな感じだ。
「ちょっくらごめんよ、マサ居るかい?」
「おっ何だいマサ」
「いや、マサに折り入って頼みてぇことがあってな」
「おいおいマサ、みずくせぇぜ。俺とお前の仲じゃねぇか、遠慮せずに言ってみな」
「そうかいマサ、実は明日アルバイトが急に出られなくなってな、休みを変えてもらえねぇかと思って」
「えっ・・・・」
もちろん、これは例えだ。ご心配には及ばない。当初のシフトどおりマサは今日休みだ。現に、こうしてコラムを書いている。そしてマサは出勤している。やっぱ、ややこしい。
Wマサは江戸っ子の職人ではないが、本選びの職人だ。それぞれ個人のお薦め棚を持っている。名前は似ていても選んでいる本は違う。それぞれの個性が現れている。彼らの思考と嗜好が反映された棚だ。
ご存じのように店長Mはミステリ好きだが、それだけでなく幅広いジャンルの本を選んでいる。
最近では『「ネコひねり問題」を超一流の科学者たちが全力で考えてみた。』(グレゴリー・J・グバー/ダイヤモンド社)が面陳してある。
啓文社HPでも紹介していた『放送作家ほぼ全史』(太田省一/星海社)、『プロジェクト・へイル・メアリー』(アンディ・ウィアー/早川書房)、『君の顔では泣けない』(君嶋彼方/KADOKAW)、そして『東京の生活史』(岸政彦・編/筑摩書房)、『社史・本の雑誌』(本の雑誌編集部/本の雑誌社)など話題の鈍器本もある。ノンフィクション、雑学、SF、恋愛小説と様々だ。
“日々変化していく棚をお楽しみください。”と店長Mは語っている。
スタッフNの棚は、コラム『本さえあれば、日日平安』で紹介した本が並んでいる。
『燃えよ、あんず』(藤谷治/小学館)は店長Mのお薦め棚にもある。というか、そこで見つけたのだ。面白かったので、しれっと取り込んだ。
『隠居すごろく』(西條奈加/KADOKAWA)、『草々不一』(朝井まかて/講談社)のような時代小説は、スタッフNの精神安定剤だ。
『ま・く・ら』(柳家小三治/講談社)、『頁をめくる音で息をする』(藤井基二/本の雑誌社)などエッセイも好きだ。『谷川俊太郎詩集 たったいま』(谷川俊太郎/講談社)、『サラダ記念日』(俵万智/河出書房新社)など詩集、短歌集もある。
児童書担当なので絵本も並んでいる。『へいわって どんなこと?』(浜田桂子/童心社)、『あんなに あんなに』(ヨシタケシンスケ/ポプラ社)。そしてコミックなら『父の暦』、『欅の木』、『遥かな町へ』、『犬を飼う そして・・・猫を飼う』(谷口ジロー/小学館)
お薦め本の冊数は決して多くない。入れ替わりも少ない。それだけに、ぜひ手にとってもらいたい本だけを揃えている。
書店員は自身の好きな本を様々な方法で推している。店頭で、SNSで、時に大胆に、時にさりげなく。
お薦めの本を読んでもらえるのが書店員の喜びだ。「面白かったよ」と言ってもらえると仕事の励みになる。「また紹介してよ!」なんて声をかけられると書店員冥利に尽きる。こうして本屋の仕事がやめられなくなる。
『コミックエッセイ 本屋図鑑 だから書店員はやめられない!』 いまがわゆい 廣済堂出版
本書も啓文社HP「スタッフおすすめ」で知った。
「現役書店員である著者が、日々の仕事を通して気づいたネタを四コマ漫画で描いたコミックエッセイ集です。
いまがわゆいさんは、岡山の書店員(啓文社ではないので念のため)でありながら、イラストレーターとしても活躍されています。
特に書店員にとっては、あるあるネタ、わかるわかるネタが満載で楽しいです。」西条店 三島政幸
当たり前だが本書にWマサは出ていない。それでも第2弾、第3弾と続き、いつかは出してもらえるかも知れない。書店員である限り、その可能性はある。
そうだ「Wマサ」を「Wましゃ」に改名しよう。「実に面白い」と言ってもらえるかも・・・