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佐々木大佑 がおすすめする本です。


啓文社全店のスタッフが不定期に更新する「スタッフおすすめ」コーナー。 最新書き込みから順次表示しています。

2022/07/18 更新

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フィクション

同志少女よ、敵を撃て

著者:逢坂冬馬

出版社:早川書房

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同志少女よ、敵を撃て

話題作であり、本サイトの中でも何度も紹介されてきた作品です。ですが冒頭の一場面についてだけ、僕が印象的だったところを語らせて下さい。

独ソ戦が激化する一九四二年、モスクワ近郊の小さな農村で暮らしていたセラフィマの日常は突如急襲したドイツ兵によって奪われてしまう。村の住民は彼女を除いて全員惨殺され、彼女自身も殺されるというその時、赤軍の女性兵士イリーナの部隊が現れセラフィマは救われる。生き残ったものの、家族も友人も故郷もすべてを一瞬で失い茫然とするセラフィマ。しかし、そんなセラフィマに対し、イリーナは慰めの言葉をかけるでもなく、間髪入れずこう問い詰めるのだ。

「敵はどこから来て、どこへ行った。」
「あれは、どの部隊か分かるか。」
「特徴は無かったか。」
「素性の分かる兵士はいるか!」

そんなイリーナの問いに対し、セラフィマは何一つ答えられない。

そうセラフィマは何も「知らなかった」
これが戦争か、と衝撃をうけた。見ず知らずの、知らない他者に大切な人を突然殺される。それが日常的に起こる。そして仇の敵兵も、いつの間にか他の誰かに殺されている。
何の為にセラフィマは戦うのか。そして何と戦っているのか。この作品の中で描かれる一人少女の葛藤が戦争そのものの不条理を物語る。2022年本屋大賞作品です。

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