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本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!
2022/07/18 更新
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
コミック
今日の人生2 世界がどんなに変わっても
著者:益田ミリ
出版社:ミシマ社
サプライズで還暦のお祝いをして頂きました。本社で全社員の皆さんに祝福して頂いたのです。
人生でこれほど注目されたことはありません。いつも目立たないスタッフNが、スター★Nとなったのです。
スターといえばファンからの花束贈呈です。渡してくれたのは岡山本店のTさんでした。彼女は憧れのスターを目の前にして感動で瞳をうるませ・・・ということもなくニコニコしていました。
でも知っています。彼女は私のコラムを楽しみにしているNガールと呼ばれているファンの一人なのです。それも、ごく初期からの。
なので、実は瞳の奥には・・・
Tさんだけでなく、本社および各店のNガールの皆さんに声をかけて頂きました。思った以上に好評で安心しました。つたない文章ではありますが、楽しんで頂けていることが実感できました。
これからもファンの皆さんを大切にしよう!と思いました。
帰宅して妻にその花束を渡しました。彼女こそがファン第一号であり、元祖Nガールなのですから。
「いつもありがとう。今こうしていられるのは、全てあなたのおかげです」
実はあまりにも・・・なので今は読めなくなっているコラムがあります。還暦記念としてお蔵出しすることにしました。
虚実入り混じり、話を盛ってはいますが、それも含め「今日の人生」の積み重ねがあったからこそ、なので。
その男は悔やんでいた。なぜ彼女の誘いに乗り、ホイホイと行ってしまったのか・・・
「遅番大変じゃねー、ごはん作ってあげよーか?仕事が終わったら、すぐにおいで~」
渡された手書きの地図。
こういうのを若気の至りというのだろうか。考えなしに夜遅く、一人暮らしの彼女の部屋まで行った。
お酒をすすめられた。その男はシャレにならないほどアルコールに弱い。もちろん断ったが、何度も何度もすすめられるので仕方なく口にした。
お酒だけでなく、気も弱かった。
1杯目のビール、緊張している為か大丈夫だ。しかし、急に強くなるわけはない。必死の覚悟で臨んだ2杯目。前人未踏の3杯目、だんだん意識が遠のく。
気付いたら朝、頭が痛む。自分がどこにいるのか分らない。とりあえず寝たまま手を伸ばしてメガネを探す。ふと誰かがメガネを渡してくれた。恐る恐る、その「誰か」を見る。目の前に現れたのは・・・
デニムのミニスカートからのぞく膝小僧が眩しい。
昨夜のことが思い出せない。何があったか尋ねてみた。
彼女は質問には答えず、天使のように微笑み、悪魔のように囁いた。
「つ・か・ま・え・た」
数日後、鬱々と悩んでいる男に、短大生の妹が声をかける。「お兄ちゃん、友だちの○○ちゃんとデートしてくれん?まだ男の人と付き合ったことが無い言うんよ。お兄ちゃんじゃったら合うと思うんじゃ。可愛い子で~ほんまじゃけー」
妹よ、何故それを早く言わん!お兄ちゃんは…お兄ちゃんの青春は…、3日前に終わった。
『酔って記憶をなくします』 石原たきび 新潮文庫
酔っ払い、それは奇跡を起こす生きもの。全国の酔っ払いの皆様がやらかしてくれた爆笑失敗談&武勇伝が満載の1冊。乗り過ごしやモノの紛失は序の口。酔って海へ。交番のお巡りさんへプロポーズ。タクシーで5万円払って「釣りはいらねえよ」。居酒屋のトイレで三点倒立の練習・・・
なかには一生を左右しかねない失敗もあるだろう。しかし、彼&彼女たちは悔やんでいない。いや、むしろ誇りにさえ思っている。自分達の言動は人々を勇気づけるのだ。
酔っ払いは世界を救う、かも知れない。
あれから幾年月、仕事に向かうその男を妻が見送る。可憐な「天使」だった彼女は、ふくよかな「ほてい様」に変わった。時は無常だ。
彼女は、あの時の様に「毎日遅くまで大変じゃねー」と言いながら微笑んではいるが、悪魔のように囁いた。
「は・た・ら・け」
ああ、酔って記憶も過去もなくしてしまいたい。男にはそんな夜もある。
『今日の人生2 世界がどんなに変わっても』 益田ミリ ミシマ社
『今日の人生』(8万部突破!)から3年半。この間の「日々」に、書き下ろし「ポーランドごはん」を加えた待望の第2弾!
ちなみに表紙が還暦の赤。