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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2022/07/26 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


ノンフィクション

覚悟の磨き方 〜超訳 吉田松陰〜

著者:編訳池田貴将

出版社:サンクチュアリ出版

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覚悟の磨き方 〜超訳 吉田松陰〜

「好き」は簡単に言える。ならば「愛してる」はどうだろう?
「愛」という文字は、決して軽々しく使ってはいけない雰囲気をまとっている。
「愛」を口にする時は責任を伴う。とても重たい言葉だ。

なので、「そこに愛はあるんか?」と女将さんから問いかけられた時、誰もが一瞬たじろいでしまうのだ。
ちなみに、私が「愛してる」って最近、妻に言わなくなったのは…

同じような言葉に「覚悟」がある。「覚悟」と言うには、文字通り覚悟がいる。
生半可な気持ちで語ってはいけない。「覚悟」という文字には、そんな佇まいを感じる。

特に、「私には覚悟がある」とか「私は覚悟を決めた」とか、「私」を付けて言う時には、相当な覚悟が必要なのだ。
だからあまり使わない。というか少なくても私には言えない。言う勇気もない。言っても私では格好つかない。
ましてや「覚悟」のない自分が、それを人に求めてはいけない。

なので「覚悟しいや!」と言い切ってサマになるのは岩下志麻さん、そしてわが家の妻だけだ。

1960年代前半に生まれた私たちの世代は、若いころ「新人類」と呼ばれていた。いわば「オタク」第一世代だ。
大人になることを拒んでいる「ピーターパン」のようだと揶揄され、何に対してもシラケていて、「無気力・無関心・無責任」の三無主義だとレッテルを貼られた。
本気を出さない、熱くなれない世代。あるいは暗いとか、すぐに落ち込み精神的に弱いとか言われていた。

果たして、そうだったのだろうか?
曲がりなりにも40年近く社会人として過ごしている。甘えた考えのままで過ごせる年月ではない。
どの時代でも、どの世代でも、渡る世間は、決して楽ではないのだ。迷い、悩み、不安と戦い、歯を食いしばってきたのだ。

確かにちょっとしたことで凹んだが、自分にムチ打ち、奮い立たせてきた。今では考えられない無茶な働き方もした。
だが、それくらい当然だと認めようとしない上の世代がいた。褒めて欲しいわけではない。認めて欲しかっただけなのに。

「やると宣言したことを、やり切ることが出来た人に対しては拍手喝采ですが、もし失敗してしまったらそのまま牢屋送り。世間の評価とはそのようなものです。ただ知らされた結果だけを見て、手放しに賞賛したり、激しく非難したりする。せめて、その仲間だけにはならないでください。」

『覚悟の磨き方 〜超訳 吉田松陰〜 』 池田 貴将 サンクチュアリ出版

誰よりも遠くを見据えながら、幕末を熱く駆け抜けた天才思想家・吉田松陰。
彼は外国の文明を学ぼうと、死罪を覚悟で黒船に乗り込もうとした。その後、幽閉の処分となると、小さな塾を開いて、高杉晋作や伊藤博文など、後の大臣や大学創設者になる面々を育てた。
本書には30歳という若さでこの世を去った吉田松陰が、命がけで残そうとした「願い」が集まっている。

「過去の成功を再現しようとしたり、そこそこの収入を得て、それを維持しようとしたりすれば、表面的などうでもいいことに振り回されることになります。一方、どんなに地味に見える仕事でも、本気になって取り組んでみれば、そこから簡単に人生の喜びを得ることができます。どこに意識を向けるべきか、心は最初からわかっているんです。」

努力が報われたと感じる瞬間もあった。それでもガッツポーズは心の中だけだ。
私たちは「ギンギラギンにさりげなく」の世代なのだ。

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