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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2022/09/19 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


文庫

三屋清左衛門残日録

著者:藤沢周平

出版社:文藝春秋

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三屋清左衛門残日録

息子に家督をゆずり隠居した武士が、公にできない厄介ごとを表立たず“いぶし銀”の活躍で解決してみせる時代小説。

『三屋清左衛門残日録』 藤沢周平 文春文庫
隠居して30年ぶりに剣の道場と塾に通い、釣りの趣味を得た清左衛門。「老いゆく日々」は期待通り穏やか…ではなかった。
様々な厄介ごとが元服前からの道場仲間、町奉行の佐伯熊太によって持ち込まれる。家族、親族の諍い、尾を引いている派閥争い、距離をとっていた知人、友人との再会。女性との艶っぽい問題も。
清左衛門は、ただの「終わった人」ではない。

台風接近で忘れていましたが、今日は「敬老の日」。年配の方に向けた本を紹介しようと本棚を探していて、久しぶりに手にとりました。
還暦の私が初めて本書を読んだのは、確か30代半ば。隠れた名作『秘太刀馬の骨』で藤沢周平を知り、『蝉しぐれ』、『麦屋町昼下がり』、『花のあと』、『海鳴り』など、あの頃は“周平”沼にハマっていました。

読み返していると、あるシチュエーションを思い出しました。
時代小説とはちょっと場違いですが、幼い娘が通っていたスイミングスクールでの出来事です。
その日は、お試しで息子も参加していました。スイミングデビューです。上の子が通っていると、まだ早いかなと思いながら下の子も一緒に同じ習いごとをさせるようになるものです。

ギャラリー席の窓越しに見ていると、子どもたちが一列に並んでプールサイドまで出てきました。それぞれが前の子の両肩に手を置いては、ムカデ競争のごとく数珠つなぎで歩いています。ペンギンの行進のようでもあり「可愛らしいな~」と思いながら、「さて、うちの子は・・・」と探していると、泣きじゃくってインストラクターのお姉さんにしがみついている男の子がいました。
そう、うちの子でした。

息子は何時までも泣き止まず、見かねた妻が「あ~もういけんな…」と引き取りに行きました。
よって息子は、華々しいデビューと同時に涙の引退という、記録ではなく記憶に残る幻のスイマーになったのです。

「幻のスイマー」事件の真っ最中に本書を読んでいたからか、息子に家督をついで隠居するという日が、私にもいつかは来るのだと想像していました。それでも息子は、赤ちゃんと言ってもいいくらいだったし、自分も30代で年齢的にはまだまだ先の話だと思っていました。
それが、いま読み返して気付きました。物語の中で清左衛門は3年前に妻を亡くしています。その時、49歳だったと回想しています。ならば隠居した清左衛門は52歳。えっ、年下じゃん!

これはアラフォー、アラフィフの方にこそ読んでおいて欲しいと思いました。
還暦後に再読する楽しみがありますよ。

ちなみに、もうひとり年齢が気になりネットで調べた人がいます。ジブリ映画「風の谷のナウシカ」に登場する剣の達人でありながら争いごとを好まない戦士・ユパ様。
ご存じのようにあの髭です。年上かと思っていたら・・・まだ40代と書いてありました。

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