瀬尾まいこさんの作品が好きです。読む前と読んだ後で世界の見え方が変わる気がするから。いつもは自分のことで一杯一杯だし、皆それが普通だと思うけれど、少しだけ優しくなれる。負けず嫌いで、あまつさえ性格が悪い僕にとっては期間限定の優しさかもしれないけれど、優しくなれた“気がする”だけでも気分はいいもんです。

今回紹介するのも、そんな優しい気持ちになれる作品。
ところで、この記事を読んでいる人はPMSって知ってますか。パニック障害は知ってますか。僕はパニック障害は聞いたことがあったけれどPMSなんて言葉も聞いたことがありませんでした。PMS＝月経前症候群。詳しくはこの作品を読んでください。怖いのは僕みたいに「知らない人」がいるってことです。僕たちはすぐに他人のことを知った気になってしまう。あなたが嫌いな誰かも、実は周囲に言えないような深い傷を抱えて生きているかもしれないのに。

じゃあ、どうすればいいんだろう。他人を知るしかないんです。

この作品で描かれるのは全く別の問題を抱えた二人の男女の物語。一人はパニック障害、一人はPMS。厳しい社会の中で、それぞれ違った生きづらさに苦しむ二人は出会い、少しずつ互いのことを知っていきます。それが例え、理解には程遠い小さな歩み寄りだったとしても、あなたが「傷ついている」ということを知っている人が一人いるというだけで、きっと生きるのは少しだけ楽になる。
まったく、何て温かくて良い作品を書きやがる。毎分毎秒、瀬尾まいこさんの作品を摂取して僕も優しい人間になれればいいのに。あーあ。