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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2022/12/09 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

カプチーノ・コースト

著者:片瀬チヲル

出版社:講談社

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カプチーノ・コースト

主人公の早柚は、1か月の休職中に、毎日海岸のゴミ拾いをするようになった。

あとからあとから、ゴミは投げ込まれ続ける。海岸にも、わたしの心にも。

海に近い尾道育ちなので、今もたびたび海に行きます。
本とコーヒー、キャンプ用の折りたためる椅子を持って。砂浜に座って本を読み、コーヒーを飲み、時々顔を上げて波のふちを眺めていると浮き上がって見えてくるプラスチックの欠片たち。
まるで視力回復の立体視の絵みたいに、一度見えたらもうそれまでの海とは違っている。その波間や砂粒の上に。もう目は元に戻らない。

みんなうまく世界をすいすいと泳いでゆく。
わたしだけが、胸の奥に積み重なったマイクロプラスチックで胸が塞がれ、手足に細く裂けたビニールが巻き付いて動けなくなっているような気分になるときがあります。
なんでわたしだけ、うまく避けて進めないのだろう。
いちいちひっかかって。つまづいて。見つけて。目にとめてひろってしまって。
子どもの頃、意識しすぎて呼吸のしかたとか歩きかたがわからなくなったときみたいだ。

そんなふうに思ってしまう人、どこかにいますか?


ぬいぐるみではなくひんやりとした石を抱くような落ち着きを得られる小説です。
そういうのがいい時が、あります。

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