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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2022/12/05 更新

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井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

キリンに雷が落ちてどうする 少し考える日々

著者:品田遊

出版社:朝日新聞出版

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キリンに雷が落ちてどうする 少し考える日々

小説家、漫画家、漫画原作者、ライター、編集者…そしてダ・ヴィンチ・恐山、それが品田遊です。
1000日以上欠かさず発表してきた日記が1冊の本になりました。

『少し考える日々』とありますが、少し、なんてもんじゃない。
ただのファクトを、疑う余地のないものを彼は拾い上げ、ためつすがめつ見分し、分解し、組み直し、可能性を与え、元の場所にそっと置く。置く向きがたいてい逆だ。右左、上下、天地、陰陽を間違って捉えているのは間違いない。
そうやって置かれたものはもはやさっきまでなんだったかわからなくなっている。

彼の日々を日記で垣間見る。
生きるのが下手だ。うそみたいに下手だ。
地球に来たばっかりの人か。
わけがわからない…とオフィシャルにつぶやく心の声の奥底から唸り声のように湧き上がる『…わか…る…!!…』が外に聞こえないように、『わたしはわからない!』とオフィシャル心の声のボリュームを上げる。

きっと彼があまりにぎくしゃくして見えるのはこの世界の大多数の人々の『ノリ』に乗っていないだけなのだ。
わたしがごまかしごまかし乗っている『普通』は、ただの多数決の、多勢の、この時代の、この国の、この世代の、この地方の、この集落の、この組内だけのものだ、きっと。
多数と正常と正義と正解を、ごっちゃにしてはいけないんだ。

関係ないですが彼の仮面の上に眼鏡を着けているスタイルがいつ思い出してもふふっ、となります。お風呂上がりに紙パックを顔に張り付けて上から眼鏡を着けるとき必ず思い出して『ダ・ヴィンチ・恐山スタイル…』とちょっと楽しいです。


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