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啓文社全店のスタッフが不定期に更新する「スタッフおすすめ」コーナー。 最新書き込みから順次表示しています。

2022/12/23 更新

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いのちの車窓から

著者:星野源

出版社:KADOKAWA

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いのちの車窓から

実は、この本を紹介するかは迷った。なぜか。話は一年前にさかのぼる。大学の一室でいつものように友人とたむろしていたときのことだ。スマホをスクロールしていた指がピタリと止まった。画面にはこんな見出しが躍っている。

「星野源!ガッキーと逃げ恥婚!」

最初はあの社会現象を巻き起こしたドラマの宣伝かと思った。しかし、どうやら違った。現実でとんでもなくめでたいことが起こっていた。穏やかな時間が流れていた構内の一室は僕が開いたスマホの画面を見せた途端に混沌と化した。嬉しそうに手を叩く者。膝からくずれ落ちる者。恋ダンスを踊り出す者。「ガッキー、ガッキー」としか語彙が発せなくなった可哀想な生き物。まさに阿鼻叫喚な状況の中で僕は星野源が結婚したということに対する嬉しさと、ガッキーが結婚したということに対する絶望の両方を噛みしめていた。
僕は星野源という人間が好きだった。そしてガッキーにも憧れていた。だから当然二人が共演する「逃げ恥」は見ていた。それだけでなく、星野源のオールナイト日本もよく聞いていたし、LIFEなんか家族一緒に笑いながら見ていた。「リーガルハイ」を見て当時友達と面白かったところを言い合っていたのも良い思い出だ。そんな二人が結婚したのだ。すごいことだ。だけど、あえて男性代表として言いたい。ガッキーと結婚するとは聞いてなかったよ、と。

つまり、なぜ僕がこの本をおすすめするのを躊躇ったかというと、ガッキーの結婚に絶望してしまった男性たちの、噛みしめすぎた下唇が無くなってしまうような内容もこのエッセイの中には書かれているかもしれないからだ。だけど、そろそろ二年経つ。だからあえてこのタイミングでこの一冊をおすすめしようと思った。

このエッセイの中で綴られる星野源の視点、何気ない日常の風景の中に面白さを見出だす素直なところが星野源という人の魅力であり、この本の面白さだと思う。また、星野源と交流の深い人物たちとのエピソードも語られるため必見だ。
僕が特に好きなのは「夜明け」という一篇。深夜、夜更かしをしているとき、この一篇を思い出す。何も楽しい夜ばかりじゃない。どうしようもなくて眠れない夜もあるのだと最近になって知った。そんな時、こんな時間になっても起きている自分以外の誰かの存在を想像する。もしかしたら、それは今後出会うことのない知らない誰かかもしれないし、星野源かもしれないし、ガッキーかもしれない。そんなことを考えているといつの間にか朝が来ている。

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