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いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?
2022/12/26 更新
いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
フィクション
南海ちゃんの新しいお仕事 階段落ち人生
著者:新井素子
出版社:角川春樹事務所
そうか、わかった。空間の亀裂があったのだ。
実家の階段にも、高校の中庭にも、旧啓文社コア福山西店の入り口にも。
わたしはこの物語の主人公、南海ちゃんの階段落ち人生を、フィクションで大げさに書いている、とはまったく思えない。
階段から、落ちる。物心ついたころから結婚して実家を出る27歳まで、きっちり階段を落ち続けていました。
大人になっても変わらず、啓文社の出勤前に。ずだだだだだ…どすん!!と。
もうわたしが階段で大きな音を立てて落ちても、家族の誰も駆けつけないくらいに日常になっていました。
外でも転ぶ、落ちる、ひっかかる。スカートだと両ひざ血まみれだし、ズボンだと両ひざが破けます。
そして何よりものすごく恥ずかしい。
そしてわたしも南海ちゃんのように、骨折などひどいけがをしたことがありません。
毎度絆創膏で済む程度です。
ぐぬぬ。まさかこれがわたしのどんくささのせいではなく、世界の『亀裂』に足をとられていたせいなんて…!!!
まあさておき。
どんなにすっ転ぶ人生でも、新井素子さんの新刊を今年も読めて、そりゃもうハッピーです。
言うことありません。
大人になればなるほど、いろいろなことを経験し、岐路に立ち、振り返って選択を悔んだり、時にはしゃがみこんでもう立てないかも、なんて思ったりもします。
でも今回も、南海ちゃんの『まっとう』さが自然にわたしの手を取って立ち上がらせてくれる。
そうだなあ。一番に聴くべきなのは、わたしの声だ。
なにもかもをとっぱらって、一番奥に湧き上がる気持ちだ。
自分に背を向けていなければ、後悔したとしてもきっと納得してるでしょう。
今回も最高。まずジャケも最高です!
表紙イラストの南海ちゃん可愛い!!!
そして板橋さんの飄々とした…とぼけた…絶妙な感じ!!
ぜんぜん名コンビな感じがしません 笑
表紙のイラストの感じでどこまでも何処へだって突き進んでゆく二人の後姿を想像してなんか涙ぐんでしまいます。
今年も大変にいい一年でした。
だって新井素子の新刊が出たからね!!