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あなたも3分でミステリ通になれる(仮)

あなたも3分でミステリ通になれる(仮)

政宗九がおすすめする本です。


某店店長でもあり、ミステリマニアとしても知られる「政宗九」によるミステリコラム。
これを読めば、あなたもミステリ通です。

2023/01/09 更新

あなたも3分でミステリ通になれる(仮)


政宗九がおすすめする本です。


フィクション

名探偵のままでいて

著者:小西マサテル

出版社:宝島社

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名探偵のままでいて

ミステリ作品を紹介しているこのコラム、2022年は結局6本しか書けませんでした。
2023年はたくさん紹介したいと思っています。
というわけで、2023年の第一作目は……。

2021年に新川帆立さんの『元彼の遺言状』が大きな話題になった「このミステリーがすごい!大賞」。その最新の受賞作が、小西マサテルさんの『名探偵のままでいて』(宝島社)です。
小西マサテルさんは、現在もラジオ番組を中心に活躍されている放送作家。「ナインティナインのオールナイトニッポン」などを担当されているそうです。
そんな小西マサテルさんの受賞作はなんと、認知症の老人が名探偵となる連作ミステリです。
幻視や記憶障害を伴う「レビー小体型認知症」という病気を持つ祖父の元に、孫娘の楓が謎を持ち込むと、驚くべき推理力を発揮する――この設定からして、面白そうではないですか。

そしてなによりも本書がすごい点は、ミステリマニアが読むと嬉しくなってしまうような趣向にあります。
孫娘の楓は小学校の教師ですが、実は往年のクラシックミステリが好きという設定。そこで「クラシカルミステリの神」として紹介されるのが、瀬戸川猛資さんなんですよ! ここで「おおっ!」と反応したあなたは、ミステリマニアです。ワセダミステリクラブOBで北村薫さんや折原一さんなどの直接的な先輩であり、評論家として『夜明けの睡魔』などの名作を発表された方です。私にとっても「神」的存在の、瀬戸川猛資さんの名前が出てくるだけで、これはただのミステリではないな、と思います。探偵役として活躍するおじいちゃんもまた、ワセダミステリクラブOBという設定です。
そして登場する謎は、密室殺人、人間消失、『幻の女』を思わせる幽霊騒動などなど、めちゃくちゃ本格的で、古典ミステリへのオマージュに満ちたものばかり。びっくりすると当時に嬉しくなってしまうのです。もちろん、おじいちゃんの推理も見事。
さらに最終話では、楓の身に大ピンチが……という展開もあり、サスペンスとミステリの融合に驚かされます。
デビュー作でこの完成度、これからの活躍が楽しみですね。

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