おすすめの本RECOMMEND
いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?
2023/02/04 更新
いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
フィクション
真珠とダイヤモンド 上・下
著者:桐野夏生
出版社:毎日新聞出版社
1986年春、福岡の証券会社に入社した小島佳那と伊東水矢子。ふたりのゆく道はそのまま日本という国の激しい青春から晩年へと向かう物語です。
彼女たちが手を伸ばし、掴みかけてその指をすり抜けていった大きなうねりはいったい何だったのか。
『時代』という記号でしか知らなかったものの、ひとりひとりの顔や野心や欲や幸せや悲しみが、生きている熱が伝わってきました。
わたしは一度だってこんな熱を持ったことがあるだろうか。
わたしが吸ってきた息苦しい空気とあまりの違いにめまいがしそうだ。
岩に叩きつけられるのを恐れもせずに激流に飛び込む彼女たちと、足を竦ませて目の前を流れ去ってゆくものをただ見ているわたしたち。
どうせ何もつかみ取れないなら、佳那と水矢子のように飛び込んでいたなら。
きらめきを、眩しく見ていることしかできません。