原爆ドームの隣に佇む「おりづるタワー」をご存知でしょうか？１９７８年建造のビルを広島マツダが２０１０年に取得し、６年の歳月をかけてリノベーションされ２０１６年９月に全館開業しました。本書は本プロジェクト推進者である広島マツダの松田哲也会長兼CEOによる回顧録と、平和都市ヒロシマへのメッセージが込められた１冊。
　私は本書を読むまで「マツダの資本力があったからこそ出来たタワーでしょ」ぐらいに思っていました。松田会長は確かに松田家の血筋を継ぐ人ではありますが、本書ではその血筋に反発した学生時代、社長だったお父様との確執が率直に語られています。その上で、松田会長がこのビルを開業するに至った想いを読むと、最初の思いがかき消されました。
　戦争・原爆を実体験していない広島に関わる世代がこれから何をすれば良いのか、考えさせられる１冊です。