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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2023/03/17 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

ゴリラ裁判の日

著者:須藤古都離

出版社:講談社

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ゴリラ裁判の日

この物語の主人公、ローズは、カメルーンで生まれたニシ・ローランドゴリラ。
母と人間に手話を教わり、思考するためのツール『言葉』を手に入れた彼女は、成長するうちにいつしか人間に匹敵する知能を持つようになる…。

ローズのことを好きになればなるほど、先を読むのが怖くなった。
かわいい、素晴らしい、チャーミングなローズだけどいまに打ちのめされ、負けてしまうだろう、この世界に。
それを見るのはつらいな…。

なんて、とんでもなかった!
わたしの勘違いがひどく恥ずかしい。

ローズは野生動物だから。きっと純粋で、素直で、悪意を知らず、人間を信じて期待して裏切られる。
そんな儚くか弱い存在ではなかった。ぜんぜん。

ローズは、自分が何者であるかを知っていた。
わたしたちがいつまでも探し回っている『自分』と常に共にいて、深く理解していた。

利用されることをわかっていて、それすらも利用するしたたかさを持っていた。
自分の望みが何であるかわかっていた。

わたしは、人間だろうか?
自分の心と体を、ちゃんと支配して自由に生きているだろうか?
見えない檻にとらわれてはいないだろうか。

ジャングルでの自由な身体と命を持つローズも、アメリカで人間と言葉や心を通わせ自由な意思を持つローズも大好きです。

この世界でローズにしか見えない角度からの、人間というものについてずっと考えています。
人間って、何なのだろう。


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