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佐々木大佑 がおすすめする本です。
啓文社全店のスタッフが不定期に更新する「スタッフおすすめ」コーナー。 最新書き込みから順次表示しています。
2023/03/22 更新
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岡山本店
佐々木大佑がおすすめする本です。
コミック
よふかしのうた➀~⑮
著者:コトヤマ
出版社:小学館
夜の世界は少し危なくて、知らないものに溢れている。
些細な事をきっかけに不登校になっていた主人公・夜守コウはある日、誰にも言わず一人夜の街に繰り出し、そこで吸血鬼の七草ナズナに出会う。ナズナと遊ぶうちに夜の世界の楽しさに魅せられたコウはナズナに自分の血を吸って吸血鬼にしてほしいと頼むが、吸血鬼になるには、ある特別な条件が必要だった。それは「吸血鬼に恋をすること」。「ナヅナに恋をするため」にコウは毎日よふかしを続け、ナズナと、その他の個性的な吸血鬼たちと交流を深めることになる。
コウがナズナに抱く感情は恋なのか、それとも別の何かなのか。序盤こそジョブナイルな雰囲気で物語は進んでいくが、吸血鬼の性質―人間をたぶらかし、血を吸い眷属をつくるという事実が判明し、吸血鬼によって人生を狂わされた“復讐者”が登場したあたりから物語はシリアスに加速する。恋は人を狂わせる。吸血鬼の魔性にとりつかれた人間は、血を吸われ眷属になり二度と昼の世界には戻れない。人間と吸血鬼のはざまで、まだ恋を知らないコウは夜の闇の中を奔走する。
好きな作品ほど誰かにおすすめしたり、話したりすることが出来なくなることがたまにある。なぜだろうと、長い間ぼんやり考えていたが最近その理由が分かった気がする。そういった作品は周囲に普段は見せることが出来ない自分の深い所に関わってくることが多いからだ。たぶん。
『よふかしのうた』という漫画は、僕にとって、つまり、そういう急所のような部分を突いている。一度思い切って仲の良い友達に『よふかしのうた』が好きで読んでいると話したことがあるが、やはり意外そうな顔をされた。けれども、今回紹介しようと思ったのは、それこそ夜更かしをして、深夜コンビニに立ち寄り、何となくそこにあったサンデーを手に取って読んだときに見た、この漫画の中に登場する、とある二人の男女の恋愛の幕引きに、ひどく感傷的になってしまったからだった。こんな風に誰かを好きになれたなら、きっと悲劇的な結末でさえ綺麗だったねと笑えるのだろう。やはり、この漫画を読むと調子が狂うとのぼせながら、肉まんとサンデーを買って深夜コンビニを鼻歌交じりに出る、やばめの客が僕だった。最後に絶対に言っておかないといけないことを一つ。書店員が深夜にコンビニで立ち読みしてごめんなさい。あと今度から、ちゃんと本はうちのお店で買います。