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佐々木大佑 がおすすめする本です。


啓文社全店のスタッフが不定期に更新する「スタッフおすすめ」コーナー。 最新書き込みから順次表示しています。

2023/03/26 更新

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佐々木大佑

がおすすめする本です。


ノンフィクション

エンド・オブ・ライフ

著者:佐々涼子

出版社:集英社インターナショナル

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エンド・オブ・ライフ

「死生観」とは何によって決まるのだろう。重たい頭をもたげて、らしくないことを考えてしまうのは、最近悲しいことがあったからだ。
恐らくそれは、膨大な知識や経験の上澄みを掬いとったようなところから生まれるようなものではないはずだ。何を食べて、どんな人と生き、笑い、泣いて、どこへ行き、何に心を動かしたのか。そういう日々の積み重ねの中できっと培われていく。けれど、今僕が言ったもっともらしい言葉もすべて間違ってはないけれど正解ではないように思う。人それぞれ違って異なっている。誰かと共有することが難しい概念が「死生観」というものではないか。
では、その「死生観」が如実に、顕著に表れるのは一体いつどのようなタイミングなのか。この本を読んで思った。それはその人の死に際だ。どんな風に死にたいかという理想は、そっくりそのまま最後までどんな風に生きたいかという問いに対する答えに替わる。そういった思考の反転する瞬間がこの本には濃縮されている。終末医療の現場の最前線、京都のとある診療所で精力的な取材を続けてきた著者・佐々涼子さんの視点で綴られる死に直面する人々の姿は、ある人にとっては辛く、寂しく、また別のある人の目には感動的に映るのだろう。
この本を読んだのは数年前だが、本当の話、僕はその時この本を読むのに3か月かかっている。こんなに一つの本を読むのに時間がかかったのは初めてだった。内容が難しい、というよりは受け付けなかった。考えるのが怖かったし、今すぐに正解を探すようなものでもないと思った。思考停止と現状維持。それが3カ月の末、僕が出した答えとも言えないような答えだった。けれど、またいつか、それが出来れば100年後とかそのくらい先なら大往生だが、向き合う時が来る。その時にもう一度この本を開くのか、逃げるのか。また別の何かに縋るのか。今はまだ分からないが、とりあえずこの本は紹介しておこうと思った。月並みなことを言うようだが、精々頑張って、そして出来るだけ楽しく生きてやろうと思うのだ。

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