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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2023/04/09 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


フィクション

おしいれのぼうけん

著者:ふるたたるひ/たばたせいいち

出版社:童心社

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おしいれのぼうけん

バナナはおやつに入りますか?
世代によってその金額は異なるだろうが、皆さんも覚えがあるのでは。遠足に持っていけるお菓子には上限があり、オーバーしないよう必死に計算して選んだこと。
「300円までだった」と記憶されている人が多いだろう。しかし半世紀前、昭和40年代の小学生、それも低学年は100円だった。駄菓子の多くが10円単位で1個5円というのもあった頃だ。いや嘘ではない。なにせ覚えているもの、この私が。

遠足の前日、そのころから優柔不断だったので売場で長時間考えていた。候補を並べ、何パターンか組み合わせを試していた。メインは10円か20円、ちょい高い30円は一つだけ。50円なんて高級品は買えんなぁ…
しばらくすると2歳上の兄も買いに来た。上の学年だからさすがに200円だったかも知れないが、見るからに高そうなお菓子を1個だけ持ってレジに行き購入、すぐに店を出た。その間は2分とかかってない。
すげぇ~、かっけぇ、なんも悩まずに選べるなんて大人だ。兄貴ぃ~

絵本は短編に入りますか?
もちろん絵本も立派な短編小説だと思う。子どもだけでなく大人もワクワク、ドキドキさせられる物語がある。それも10年、20年どころか40年、50年と読み続けられている作品も少なくない。
『おしいれのぼうけん』(ふるた たるひ/たばた せいいち 童心社)は、その代表と言えるのではないだろうか。

お昼寝前に、ミニカーのとりっこでけんかをした“さとし”と“あきら”は、先生に叱られておしいれに入れられてしまいます。そこで出会ったのは、地下の世界に住む恐ろしいねずみばあさんでした。
ふたりをやっつけようと、追いかけてくるねずみばあさん。でも、さとしとあきらは決してあきらめません。手をつないで走りつづけます。80ページものボリュームがありながら、かけぬけるように展開するふたりの大冒険。1974年の刊行以来多くの子どもたちが夢中になり、版を重ねて累計230万部を超えるロングセラー絵本。

『おしいれのぼうけん』が発行された1974年(昭和49年)を調べてみた。TVドラマ『傷だらけの天使』(1974年―75年・日本テレビ)が放映されていた頃だった。
ドラマの中で水谷豊さん演じる“あきら”(奇しくも本作に登場する“あきら”と同名)が、萩原健一さん演じる“おさむ”(さとし、でないのが残念)を「兄貴ぃ~」と呼んでいた。もうおわかりだろう。「兄貴ぃ~」つながりで思い出したのが冒頭のエピソードという訳である。
ちなみにその1974年に生まれたのは草彅剛さん、有吉弘行さん、陣内智則さん、そしてハリウッドザコシショウ。またその時の私は小学校の低学年・・・ではなく、もう最上級生だったけどね。

素晴らしい短編と言える本書だが、紹介するのにちょっとした不安もある。私たちの年代ならケンカをしたり、いたずらをして押入れに入れられても「そうだったよな~」と懐かしく思える。だが、いま現在お子様をお持ちの方にしたら「その指導法はちょっと・・・」と危惧されるのではないだろうか。
いうことを聞かない子を押入れに入れて懲らしめる。「ごめんなさい」と謝るまで出してもらえない。本人はもちろんだが、その様子を見ている他の園児たちへの警告というか、もはや脅しである。ちょっとどころではなく、かなりヤバい先生だと言える。
でも読んでいるとわかる、先生たちも悩んでいたのだ。なにがベストなのか、子どもたちの様子をしっかり観察しながら試行錯誤を繰り返し、子どもたちから学びながら先生も成長しているのだ。

色んな考え方や捉え方もあるだろうが、とにかくこの物語は理屈抜きで楽しんで頂きたい。さとし君とあきら君の2人の活躍を見ていると、友情・努力・勝利という週刊少年ジャンプの漫画を読んでいるように気持ちが昂る。
なにしろ冒険ファンタジーとして素晴らしい。ハラハラする脱出劇は『インディジョーンズ』を思い浮かべる。映画化するのなら間違いなくスピルバーグだろう。

そう言えば、本書を読んでいてあの年代を思い出すことがもうひとつある。これ言っていいのか・・・でも言ってしまおう。2人を押入れに入れる担任・みずの先生のスカート丈は短い。いわゆるミニスカートだ。もちろん当時の流行りである。

私たちの世代にとってミニスカートと言えばキャンディーズだ。彼女たちは1973年デビュー、本書が発行された1974年には「8時だョ!全員集合」にアシスタントとしてレギュラー出演。翌1975年には「年下の男の子」が大ヒット。センターでボーカルを務めたのはランちゃんこと伊藤蘭さん。水谷豊さんの奥様である。ほら「兄貴ぃ~」に繋がった、どうよ!

今回のコラムは以上です。最後まで読んでくれてありがとう!
みんな風呂入れよ、宿題やれよ、歯みがけよ、じゃ、また来週!!

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