年末ミステリ大賞常連だったシリーズ『機龍警察』でファンの多い月村了衛の新作です。
現実の中国と香港の情勢をさりげにからませつつ、日本を舞台におくことで複雑な政治問題がわかりやすく描かれています。
穏健派ともいわれた元教授の裏切りと逃走。助手殺しの罪で国際手配されている彼女は本当に香港を裏切りマフィアに加わったのか。
インターポールの仲介で日本に派遣された香港側には元教授の教え子や復讐に燃える者など一枚岩でなく、一方警察内部のやっかい者を集めてつくられた日本の分室も曲者ばかり。
元教授を匿っている香港マフィアとの抗争や国家の陰謀に巻き込まれた分室の面々は反目しながらも徐々に共闘してゆきます。
この最初バラバラだった香港警察東京分室の両メンバーが段々と理解しあい、周囲の思惑や陰謀をなぎ倒していく展開が月村節の真骨頂ではないでしょうか。