目次には第一章万引き犯、第二章殺人犯、第三章覚醒剤事犯…と物々しい犯罪の数々が並んでいる。
犯罪者憎しと読み進めると自分の視野の狭さ・傲慢さを反省し登場人物ひとりひとりが大切で愛おしい存在に思えてくる。

　舞台はとある女子刑務所。そこに神田川病院の医師太田香織先生と看護師松坂マリ江さんがひょんなことから半年派遣されるところから話は始まる。

ここで活躍するのは同僚から授かった不思議な聴診器。
この不思議具合は本書で体験していただくとして、この二人の無駄だらけと言っていい会話がいい。
くだらないようでいて気づきがあり、そしてファンタジー要素と現実世界の描写のバランスが絶妙である。もう読む手が止まらない。

刑務所にいる時点で色眼鏡で見られがちだが、聴診器パワーで罪の背景や事情が主人公および読者にも伝わり、懲罰だけでなく更生や教育が大事であり正しく現実を知るということ。
垣谷美雨先生マジック、ぜひご一読を。