主人公・直子は、人よりも少し先に気づいて行動する。
いつもニコニコとしていて周りからいい子と言われるものの、内面では自分の親切心や気遣いが他者に都合よく消費され、損な役ばかり回ってくる気がして日々鬱憤がたまっていく。

中でも、歩きスマホをしてぶつかってくる人を除けてあげ続けることに対して、“前を向いてまっすぐ歩く人だけが、よけていくべきなんだろうか”という直子の問いは読者に様々な考えを投げかけている気がします。

『日常のむかつきが生活に組み込まれて膨らんでいった』と（インタビューで）語るその想いを作品に昇華し、人間の心の奥底の複雑な感情を具体的に描き切る、その筆力！

社会に適応しつつも、常に違和感を抱えて生きる人たちへ贈る全３話。読んだ方の心にきっと刺さる1冊のはず。おすすめです。