直木賞の候補作にもなった『高瀬庄左衛門御留書』で舅と嫁の絆、『黛家の兄弟』で三兄弟の試練を描いた神山藩シリーズの最新刊です。

架空の藩・神山藩を舞台に親子の確執とその再生を描く物語『霜月記』。
なぜ父は突然失踪してしまったのか、普段から交流の少ない祖父と父、父と息子の二組の親子の葛藤と、不器用ながらも分かり合えないかとそれぞれが歩み寄ろうとする姿が胸を打ちます。

辻斬りの死体の側に落ちていた根付はもしかして父の物ではないか？疑いつつも信じたい…

事件の真相と父親の失踪の理由が複雑にからみあい思わぬ方向へ物語は進みます。
藤沢周平や池波正太郎の新作はもう二度と読めないが、あの人情味あふれる時代小説を味わいたいと思う方はぜひ本作、ご一読を。