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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2024/01/24 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


文庫

チク·タク·チク·タク·チク·タク·チク·タク·チク·タク·チク·タク·チク·タク·チク·タク·チク·タク·チク·タク

著者:ジョン·スラデック 鯨井久志:訳

出版社:竹書房

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チク·タク·チク·タク·チク·タク·チク·タク·チク·タク·チク·タク·チク·タク·チク·タク·チク·タク·チク·タク

ロボットが出てくる物語が好きだ。
人間と共に生き、やがてわたしたちのように考え、行動するようになったら。意志が、心がそこに生まれたとしたら…?
わくわくするストーリーですね。
でも、その心の芽生えのきっかけが『怒り』や『憎しみ』だったとしたら…???

ロボットを使うことが当たり前になった世界。家事や医療、その他さまざまな専門的な仕事でロボットにできないことはない。
どんな場所で、どんな仕事でも完璧にこなせる。ロボット達にはロボット三原則を遵守させる『アシモフ回路』が組み込まれているから。

①ロボットは人間を守らなければならない。
②ロボットは①に反しない限りで人間の命令に従わなけ   
 ればならない。
③ロボットは①と②に反しない限りで自身を守らなけれ    
 ばならない。
 要するに、人間ファーストってこと。安全、安心。

この物語の主人公、中古ロボットのチク·タクは、6人目の所有者(オーナー)スチュードベーカー夫妻の元で突然、日常の業務の最中に殺人を犯します。
そこからはもう止められないチク·タクの突き進む悪の道。
このロボットの辞書に『躊躇(ちゅうちょ)』の文字はないのか。そして周りの人間達の気が付かないのもすごい。明らかな状況証拠があっても人間の目はロボットの上を素通りしていきます。
だって、あれは便利な家電。人間の道具。悪事なんか出来るわけがない。

チク·タクの目的は一体何なのか。
彼はなぜこんなことをするのか。
チク·タクの無軌道な残虐な行動を見ているうちに、チク·タクが長い時間をかけ、6人もの所有者(オーナー)のもとで何を学習したのかがわかってしまいぞっとする。
これって人間じゃん…!!
グロいおぞましいものを怖いもの見たさで覗き込んでいたつもりだったのに、深い穴から見返して来るのは‥誰だろう。

チク·タクが生まれる日は、もう間もなくかもしれません。



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