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あなたも3分でミステリ通になれる(仮)

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政宗九がおすすめする本です。


某店店長でもあり、ミステリマニアとしても知られる「政宗九」によるミステリコラム。
これを読めば、あなたもミステリ通です。

2024/01/26 更新

あなたも3分でミステリ通になれる(仮)


政宗九がおすすめする本です。


フィクション

推理の時間です

著者:法月綸太郎 方丈貴恵 我孫子武丸 田中啓文 北山猛邦 伊吹亜門

出版社:講談社

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推理の時間です

突然ですが、みなさんはミステリ小説を読む際、真相を当てよう、と思いながら読んでますか?

私は、ほとんど気にせずに読んで、真相部分で純粋に驚くタイプです。ごく稀に、結末が分かったりしますが、だからといって優越感に浸ることもなく、作者が用意していたサプライズに感心します。
でもまあ、ほとんどの場合は真相が全く見抜けず、ああっ、そうだったのか! と驚く。ミステリ読書の醍醐味は実はそこにある、と思ってますから。

中には「読者への挑戦」が挿入されたミステリもあります。そのページまでの時点で、真相を見抜くデータが出揃ったので、どうぞ推理してください、と作者が読者に語りかける小説です。
古くはエラリー・クイーンが「国名シリーズ」で常用し(なかには「推理するためのメモを書く余白」まで用意された『オランダ靴の謎』という作品まであります)、日本人作家もよく、この趣向を使っています。
日本の作品でもっとも有名なのは、島田荘司さんの『占星術殺人事件』で、読者への挑戦が二度も挿入されていたりします。特に二度目の「読者への挑戦」は、犯人の名前を明かした段階で出てくるのです。それほど難解、ということですね。他に有栖川有栖さんの「江神二郎シリーズ」長編なども「読者への挑戦」が入った作品としてよく知られています。

さて、今回紹介するのは、『推理の時間です』(講談社)
なんと、6人のミステリ作家による「読者への挑戦」もののアンソロジーで、解決編は袋とじになっています。
収録作品は、
〈フーダニット〉
法月綸太郎さん「被疑者死亡により」
方丈貴恵さん「封谷館の殺人」
〈ホワイダニット〉
安孫子武丸さん「幼すぎる目撃者」
田中啓文さん「ペリーの墓」
〈ハウダニット〉
北山猛邦さん「竜殺しの勲章」
伊吹亜門さん「波戸崎大尉の誉れ」
の全6編。
読者への挑戦で最もオーソドックスなのは「犯人当て小説」で、「フーダニット」と呼ばれるタイプの小説ですが、このアンソロジーでは「動機当て」の「ホワイダニット」、「犯行方法当て」の「ハウダニット」があるのが新鮮。特に「ホワイダニット」は難しいと思うのですが、お二人とも見事に成功しています(我孫子さんの「幼すぎる目撃者」は傑作ですね!)。

さらに本書の面白いところは、それぞれの作家がお互いの作品の真相当てに挑戦し、それも巻末に載っているところでしょう。この企画のスーパーバイザーでもある法月綸太郎さんは、自作を除いた5作品全ての真相当てにチャレンジされています。
ネタバレになるので詳しくは言いませんが、ほとんど真相を当てている推理もあれば、まるで見当違いの推理も堂々と披露されていて面白いです。プロ作家でも間違うんだ、とちょっと安心してしまいます。

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