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あなたも3分でミステリ通になれる(仮)

あなたも3分でミステリ通になれる(仮)

政宗九がおすすめする本です。


某店店長でもあり、ミステリマニアとしても知られる「政宗九」によるミステリコラム。
これを読めば、あなたもミステリ通です。

2024/02/20 更新

あなたも3分でミステリ通になれる(仮)


政宗九がおすすめする本です。


ノンフィクション

推理小説作法 増補新版

著者:土屋隆夫

出版社:中央公論新社

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推理小説作法 増補新版

あなたが作家になりたいとしたら、まず何をしますか?
例えば、「小説の書き方」本や「文章読本」のような本をまず参考にするかも知れません。
書きたいままに書けば傑作小説が書ける人もおられるかもですが、それはそういう天賦の才能を持った人だと思います。
文章読本は古今東西たくさん出ていますので、ぜひ参考にしてみてください。

さて、ではあなたがミステリ作家になりたいなら、どうしますか?
やはり同じように、ミステリの書き方本を読んでみたくなるのではないでしょうか。
実はミステリについても、書き方本は結構たくさん出ています。

そんな中で私が特にお勧めする本が2冊あります。
ひとつは、井上夢人さんの『おかしな二人』(講談社文庫・品切)。
井上夢人さんはかつて徳山諄一さんと一緒に「岡嶋二人」という合作ペンネームで活躍されていました。その岡嶋二人時代の回想録、という内容ですが、ミステリのアイデアがどう生まれ、どのように膨らませて小説になったかが具体的に解説されており、ミステリ作法として完璧なほど素晴らしい内容です。
二人で江戸川乱歩賞を目指そう、とあれこれ苦心し、投稿しては落選を重ね、ついに数年越しで『焦茶色のパステル』で乱歩賞を獲るまで、が描かれた前半「盛の部」と、作家になってから〆切に追われる日々になり、その中でもミステリを発表し続けていく中で徐々に二人の間に溝ができ、最終的にコンビを解消するまでが描かれた後半「衰の部」の二部構成で、特に岡嶋二人のファンだった人(私もそうですが)にとっては、後半はなかなか辛いものがあります。
しかし一方で、岡嶋二人作品のほとんどができる過程も描かれているので、ミステリ作家志望者には本当に参考になります。
ただし、岡嶋二人作品ほとんどすべてのネタバレにもなっているので注意が必要ですが。

さて、もうひとつのお勧めミステリの書き方本こそ、今回紹介する土屋隆夫さんの『推理小説作法』です。
土屋隆夫さんは、昭和を代表する本格ミステリ作家の書き手。社会派ミステリの大ブームの時代でも、鮎川哲也さんと共に本格ミステリにこだわり続けた作家です。寡作家だったことも有名で、長編は数年に一作、というペースでした。
土屋隆夫さんもまた、ミステリ作家志望者に向けた創作指南を発表しました。アイデアをどこから見つけ、どのように広げるか、ストーリーはどう組み立てるか、など。平易な内容ながらヒントがたくさん紹介されています。
自身の「創作メモ」も惜しげもなく提示し、それをどの作品で活用したかまで正直に書かれています。こういう些細なことから作品に繋がるのか、という発見もあります。
そして白眉は、実際に発表された短編小説の全編を引用し、ここでどう考えて書いたか、最初から最後まで懇切丁寧に解説しているのです(テキストは「三幕の喜劇」)。ここまでサービス精神旺盛というか、きちんと教えてくれる先生、他にいないと思いますよ。

『推理小説作法』はかつて存在した探偵小説専門誌「EQ」で連載され(私はこの連載から読んでました)、光文社から発売。その後、東京創元社の「創元ライブラリ」から文庫化されました。これが長らく品切れだったのですが、このたび、中公文庫から増補新版として復刊されました。増補されたのは最晩年の著者インタビューと、エッセイ「隅の老人の思い出」。さらに解説は円居挽さんという豪華ぶり。
ミステリ作家になりたい人はぜひ読んでみてください。できれば『おかしな二人』も、古本屋とか電子書籍でぜひ。

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