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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2024/02/26 更新

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井上いつかがおすすめする本です。


文庫

嘘つきな私たちと、紫の瞳

著者:神戸遥馬

出版社:マイクロマガジン社

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嘘つきな私たちと、紫の瞳

十代にしか罹らず、左目が紫色になり次第に死に至る病《ヴァイオレット・アイ》。
この謎の不治の病と向き合う高校生たちの物語。

まず読んではびっくりしたこと。
なんでわたしは、何十年も生きた今のほうが、この命に限りがあることをずっとのんきに忘れているのだろう。

高校生の頃はもっとずっとわかっていた。

永遠に続くような明るい笑い声に満ちた日々の中で、片時も『死』や『終わり』はわたしたちの心から消えたことはなかった。
大人になるにつれて、何かが削れ欠けて鈍くなって、感じとれなくなっていった。忘れてはいけなかったことを。

ある日、親友の、自分の、大切な人の瞳が紫色に変わる。
そんな世界は物語の中だけじゃなくて、わたしたちだって終わりまでの時間がわからないだけで誰だってそうなんだ。
その日から『死んでいく』のではない。
その日から『生きき切っていく』物語の中の彼らに、新たな章を読む毎に毎回泣いてしまって大変な本でした。
ささやかなことでも、大きなことでも、その差し出される気持ちがひとつの濁りもないようで、真っ直ぐで、わたしも人にこんな風に気持ちを差し出したい!と思いました。
ほんとに。今しかない、を忘れないようにしたいです。

今、十代の中高生にぜひとも読んでほしいし(助けになってくれること絶対な小説です!)大人になってしまったわたしたちにこそ必要な小説かもしれません。嘘や間違いや後悔にまみれてもういいや、って思っているわたしたちに、それでも!取り返しがつかなくてもそれでも!と思わせてくれる物語でした。

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