おすすめの本RECOMMEND

KEIBUNSHA

いつか読書をする人へ

いつか読書をする人へ

井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2024/03/22 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

定食屋「雑」

著者:原田ひ香

出版社:双葉社

ショッピングサイト
定食屋「雑」

第1話から、わたしの心に、ちょうど、ぴったり、ぐっさり!!きました…。あああああ!!そうなの!もうやめたい、正論の刃で人を斬ってしまうのを。正しさを振りかざすどころか、全力で振り下ろしてしまうのを。
定食屋「雑」のカウンターに、背中の毛を逆立てたまま座っていた。
ぞうさんのそっけなさが。常連たちの笑いさざめく話し声が。怒りに任せて掻き込んでしまった定食の味が。全身にそっと降りてきて全身のトゲトゲをそっとなでつけてゆくように感じる。読んでいるだけで、ぜったいにこんな味だ!って思える懐かしい食事を、あまり乱暴に飲み下してしまったから、喉につかえてちょっと涙が出る。
ビールかな?うん、ビールで流し込む。苦い思いを飲み下した後に、ふーーーーっ…と長い息がでた。

他者って、本当にわたしにはどうしようもないんですよね!?夫婦でも、親子でも、どんなに親しい仲のあの人でも。そして誰だって、わたしのように間違えて、すれ違って、どうしようもできないまま人生は続くのです。

この物語は、わたしの一番よくないところをじっと見て、それでもそのままそっとしておいてくれる。

どうしようもなくたって時間は進み続けるので、日々をやっていくしかない。働いて、食べて、寝てしまおう。そうして朝が来たら繰り返せばいい。

ちょうど今、この物語がわたしの隣で静かに進んでいってくれるのが、本当にありがたかったです。

おすすめの本一覧へ