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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2024/03/25 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

定年物語

著者:新井素子

出版社:中央公論新社

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定年物語

『結婚物語』から40年。ついに正彦さんが定年に!

小説家の陽子さんと、広告代理店に勤める正彦さんが結婚をするお話から始まるこのシリーズ。
『結婚物語』『新婚物語』『銀婚式物語』『ダイエット物語…ただし猫』…そして新刊の『定年物語』が出た!!

この本のあとがきに書いてある『……えーと……ほぼ、実話です。』しかも、いくらなんでもこれは盛り過ぎだよね?ここはフィクションの箇所だよね?ってところが実話だったりする小説です。だから、物語として面白いのはもちろんのこと、ファンとして、素子さ…いや、陽子さんと、正彦さんの日々を読むのがすごく嬉しいシリーズなのです。
まず、今回も分厚くて嬉しい。いっぱい読める!!
そして『結婚物語』『新婚物語』を読んだ頃には、そういうものなのかな…?と思っていた二人の結婚生活の色々が、とてもよーくわかる。
正彦さんの昭和の男っぷりに「は!?」と憤りかけて、あれ、陽子さんも負けず劣らず頑固で自分を曲げない。そうか、ここまで長く一緒にいるっていうのは割れ鍋に綴じ蓋というか…お互いを補い合って…?許し合って…?まあ、合っているということなのかな?わたしにはまだその境地は遠くに見えます。

そして、新井素子さんの日々を垣間見ているような気がしてとても楽しい。え???そんな凄まじい読書量!?とか、ご自身の書く小説についてとか書いてあって嬉しい!楽しい!は、いやいや、そうですよね。陽子さんの日々ですよね。ごっちゃにしないように気を付けないと。

毎日の、生活や感想や感情を、解き明かすように綴る文章もとても好きです。子どもの頃から読んでいるから体にしっくり馴染んでいます。落ち着く。よく染み込みます。

わたしも、時には頑固に、意固地に、好きな本を読み暮らしながら、陽子さんや正彦さんのように老いていきたい。『普通』の中にきっといろいろなことがあるだろうけれど、それでもペースを保ちながら。そしてそのペースは落ちてゆくのだろうけれど。

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