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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2024/05/17 更新

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井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

死んだ山田と教室

著者:金子玲介

出版社:講談社

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死んだ山田と教室

山田くんは人気者だし、面白いし、本当に性格良いから、恨みを持ってる人なんて誰もいないと思うんだけど

そんな山田が死んだ。


あの頃は、本気で思っていた。
嘘になるわけないと思っていた。
絶対に、永遠に、一生、ずっとずっと。って言ってたはずのものを、わたしも教室に置き去りにしている。
あそこに閉じ込めたままだってわかっているのに、なぜだろう、もう開けてみてみる気にもなれないのは。
きらきらと光りかがやくものを閉じ込めたはずなのに、すっかり古びてつまらないがらくたの詰まった宝箱のようだ。
いや、つまらなくて開けないんじゃない。本当は中に入ってるものがこわいんだ。


わたしの上げる笑い声が、何かに突き刺さったのに気づかない振りをした。
見たいものだけを見てた。
楽しくて、幸せだったけれど、あの頃の口約束のほとんどを捨ててわたしたちは平気で大人になっている。
そんなわたしを、山田はなんて思うだろうか。


苦しくて、窮屈で、最高で、愛おしくて、笑っても笑っても笑い足りないあの日々。
また嘘つきになってしまうとしても、やっぱりわたしは山田に、あの頃と同じ言葉を言ってしまいます。きっと。

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