「わらしべ長者」や「こぶとり爺さん」で知られる「宇治拾遺物語」は鎌倉時代前期の説話物語集である。
宇治大納言と呼ばれた源隆國による「宇治大納言物語」のスピンオフであるこの作品は、芥川龍之介の「芋粥」や「鼻」の題材としても有名だ。

この14帖ある「宇治拾遺物語」の中から33篇をピックアップし、現代語訳したのがミュージシャンであり作家の町田康氏。
優れた解説者の話でスポーツが俄然面白くなるように、珍談奇談が令和の時代にポップでイカした関西弁でよみがえった。

尾籠な話やエロワードが多数でてくるが、今も昔も笑いのツボは変わらない。
人間の煩悩も変わらない。
妙に清々しい笑いに包まれる。
町田ワールドと絶妙にマッチしにやける。
どこから読んでもオッケーな気楽さ。
特に「滝口道則が術を習った話」なぞ詳細は省くが努力の方向が阿呆のエキスパートすぎて、愛すべき阿呆ン陀羅なのである。