おすすめの本RECOMMEND

KEIBUNSHA

あなたも3分でミステリ通になれる(仮)

あなたも3分でミステリ通になれる(仮)

政宗九がおすすめする本です。


某店店長でもあり、ミステリマニアとしても知られる「政宗九」によるミステリコラム。
これを読めば、あなたもミステリ通です。

2024/05/29 更新

あなたも3分でミステリ通になれる(仮)


政宗九がおすすめする本です。


フィクション

にわか名探偵 ワトソン力

著者:大山誠一郎

出版社:光文社

ショッピングサイト
にわか名探偵 ワトソン力

ドラマにもなった『アリバイ崩し承ります』などでおなじみの大山誠一郎さん。
『アリバイ崩し承ります』シリーズもそうでしたが、『赤い博物館』シリーズなど、ガチガチのミステリマニア向けのような複雑な設定の謎解きミステリを、ミステリにあまり詳しくない人を含め、幅広い読者にも楽しんでもらえるような分かりやすい見せ方で楽しませてくれるミステリ作家だと思います。

その大山誠一郎さんの新刊『にわか名探偵 ワトソン力』(光文社)もまた、軽く読めるのにミステリのトリックはしっかりしているシリーズで『ワトソン力』シリーズの第二作目にあたります。

このシリーズは設定がユニークです。
主人公の和戸宋志(わと・そうじ)は警視庁捜査一課第二強硬班捜査第三係の刑事。和戸が行くところで必ず殺人事件が起こるのですが、和戸は全く推理をしません。推理するのは和戸の周辺にいる事件の関係者たち。和戸が周辺の人の推理力を上げ、どんどん新たな推理が繰り広げられていきます。
これ、ミステリ業界では「多重推理もの」と呼ばれる設定なのですが、それをマニアックな話にせず、和戸がホームズにおけるワトソン博士のようなポジションになることから「ワトソン力」というネーミングで表現するところがさすがだと思います。

それでも、起こる事件はトリックも非常に凝っていて、ミステリマニアもアッと驚く意外性が楽しめます。
本作での私のお気に入りは、任侠の事務所で起こる殺人事件に、組長を筆頭に組員たちがどんどん推理を畳みかける「ニッポンカチコミの謎」(組長がエラリー・クイーン信者という設定が楽しい)と、故障で止まったロープウェイの2台のゴンドラでほぼ同時に殺人が起きる「二の喜劇」ですね。
最後の短編「五人の推理する研究員」は、これまでの事件の関係者が一堂に会して展開する推理合戦が楽しめます。

ちなみに各短編のタイトルは、それぞれ有名ミステリ作品のパロディになっています。
「五人の推理する研究員」は『六人の嘘つきな大学生』といった具合ですが、ややマニアックな作品もあります。
特に、「リタイア鈍行西へ」の元ネタが分かる人は、ミステリマニアです。
かくいう私も、「服のない男」の元ネタだけ分かってないのですが……。

おすすめの本一覧へ