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三島政幸 がおすすめする本です。


啓文社全店のスタッフが不定期に更新する「スタッフおすすめ」コーナー。 最新書き込みから順次表示しています。

2024/06/11 更新

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がおすすめする本です。


ノンフィクション

長い読書

著者:島田潤一郎

出版社:みすず書房

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長い読書

島田潤一郎さんが運営されている「夏葉社」は、大ベストセラーを次々に出版するような大手出版社とは一線を画した、本当に良質な本を一冊一冊コツコツ丁寧に出版されている出版社です。夏葉社のファンというか、「夏葉社の本」のファンも全国にいらっしゃいます。

島田さんは本・出版に関する本や読書に関するエッセイ集を何冊か書かれていますが、ほとんどは他社から出ています。
出版に関しては
『あしたから出版社』(ちくま文庫)
『古くてあたらしい仕事』(新潮文庫)
が名作。出版社になりたい人は必読かも知れません。

読書に関しても、
『電車のなかで本を読む』(青春出版社)
という本があるのですが、今回の『長い読書』は、島田さんの読書エッセイの集大成的な傑作です。
今までの人生を振り返り、出会った人の話と出合った本の話を落ち着いたタッチで書かれています。読めば読むほど、本の大切さや読書の素晴らしさが伝わってくるのです。

本にも様々なものがあり、そのページ数が多い少ないが大事ではないことを示す、こんな文章など、島田さんらしいな、と思います。
「ある本はたった32ページしかないのにもかかわらず、読者にゆたかな読後感をもたらす(イメージしているのは、ゴフスタインの『画家』という本だ)。ある本は5000ページ以上にわたって緻密な描写を連ねることによって、他のメディアでは提供することのできない最上のよろこびを読者にもたらす(プルーストの『失われた時を求めて』のことだ)。」
(172ページ「アルバイトの秋くん」より。数字は原文では漢数字だが、ここでは算用数字にしている)

ラストの「長い読書」は、このエッセイ集でも白眉とも言える、島田さんの義父との晩年の思い出と、それに絡んだ読書の思い出。感動的です。こんなエッセイをサラッと書けてしまう人が出版社の経営者として頑張ってらっしゃることは、思わず応援したくなってしまいます。

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