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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2024/08/22 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

オンライン·フレンズ@さくら

著者:神戸遥真

出版社:講談社

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オンライン·フレンズ@さくら

わたしが中学生だった頃、世界は教室が全てだった。
幼い頃からの違和感はどんどん大きくなっていって、わたしの苦しさや孤独を、友達や家族にもわかってもらえない。そんな気持ちが募っていた時期だったと思います。わたしが手を繋げた友達は、本でした。
物語の中に、さまざまな人や国や社会について書かれた文章の中に、わたしと同じような生きづらさを抱えた人がいて声を上げるほど嬉しかったことを覚えています。
大人になる頃には、誰にも言えない悩みを、落書きのように書き込めるインターネットという場所ができて、返ってきた思いもよらない知らない人の優しい言葉に、泣いたこともあります。

さくらの物語を読んで、中学生のあの時の気持ちが今のことのようにどばっと沸き上がってきました。
さくらが自分のさまざまな揺れ動く感情に振り回されているところは、読んでいてわたしの体も痛くなりました。そうだった、この頃は、心の痛みが本当に体を締め付けてくるんだった。胸や頭だけでなく、全身を駆けめぐるズキズキとした心の痛み。

SNSの危険なことはもちろんです。
大人が子供に触れさせたくないのはよくわかります。うちにも中学生がいます。
けれど、家族にも、クラスメイトにも、決めつけられていない自分で自由におしゃべりすること。他愛もない話でも、本当の自分を知られていないからこそ感じられる楽しさ。誰にもわかってもらえないと思っていた共感。世界は広いんだ、ここじゃないどこかがきっとあるんだ、と希望を持ってもらいたい。SNSはそんな翼であって欲しい。どこへでも行けるような。

この本は全中学生に読んで欲しいです!!最初の数ページ目からSNSの危険性や注意すべきところが学べます。本当にすごいです。
大人も子供も、SNSにのめり込み依存するのではなく、こんな風に軽やかに付き合っていけたら。そしていつしかいろいろなことを理解しあってわかり合える人になれたら。
そして現実の世界を一歩踏み出せる勇気をもらえる場所になれば。
神戸遥真さんは多作なところも素晴らしいと思います。
わたしが中学生だったら、次の新刊がどんどん出てくれるのを励みに頑張れると思います!
今はだいぶ大人ですが毎回涙でドライアイが一時的に治ります。読んでからしばらく、思い出しては目がうるうるします。
子供たちにとって、世界がこうあって欲しい、とわたしが、祈っている世界が神戸さんの書く物語そのものなので本当に嬉しいです。
苦しさの中に希望が、明るい未来が見える物語です。

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