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三島政幸 がおすすめする本です。


啓文社全店のスタッフが不定期に更新する「スタッフおすすめ」コーナー。 最新書き込みから順次表示しています。

2024/10/07 更新

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三島政幸

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ノンフィクション

フェイクドキュメンタリーの時代

著者:戸部田誠(てれびのスキマ)

出版社:小学館

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フェイクドキュメンタリーの時代

最近、地上波のテレビが詰まらなくなったと思っている者です(注:感想には個人差があります)。

特に連続ドラマはほとんど観ないですね。今年に入って観たドラマといえば、「十角館の殺人」「地面師たち」そして「極悪女王」。単発だと実写版「シティーハンター」……そう、全てネット配信のドラマばかりです。

ちなみに「極悪女王」は大傑作なのでみなさん必見です。
極悪同盟時代のダンプ松本や全盛期のクラッシュ・ギャルズを知ってる世代はもちろん、知らない世代も面白いはず。
すごいのはその再現度の高さで、山場のひとつであるダンプ松本vs長与千種の「敗者髪切りデスマッチ」など、ドラマを観た後で実際の映像も観たくなるはずです。
で、その実際の映像もあるのですが、まあ見事なまでに完全再現しています。なんなら実際の映像の方がよりえげつないです。そりゃ女子プロレスの中継が打ち切りになるはずです。
ゆりやんレトリィバァ演じるダンプ松本は、身体つきはもちろん、喋り方、歩き方、竹刀やマイクの持ち方など全て完璧。剛力彩芽と唐田えりかのクラッシュ・ギャルズも当時のまんまです。

……ちょっと興奮してしまいました。とにかく、最近は地上波ドラマがネット配信ドラマに押されているなと思っている、という話です(ふたたび注:あくまでも私個人の感想です)。

さて、そんな地上波の番組でも、時々「おっ」と思う番組があります。
例えばNHKでやってた「TAROMAN」。岡本太郎の名言をベースに、岡本太郎の作品モチーフをアレンジしたヒーロー「TAROMAN」が、これまた岡本太郎作品モチーフの怪獣と戦う番組で、1970年代に放送されていた番組のリバイバル放送、らしいです。
いや、嘘です。そんな番組、実際にはなかったのです。ですが、いかにも昭和特撮の雰囲気で、昔の映像っぽく作られ、さらに番組後半ではサカナクションの山口一郎さんが「あの懐かしの「TAROMAN」の思い出を語る」という形で感想を語っていました。

こういう、「事実ではないけれど、いかにも事実のように放送する」形式の番組を「フェイクドキュメンタリー」と言います。

「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」という映画が先駆けのひとつと言われているそうですが、日本での「フェイクドキュメンタリー」の始まりは、「放送禁止」シリーズだそうです。
本書はその「放送禁止」からのフェイクドキュメンタリー番組をまとめた一冊。
こういうネタ、大好きなんです。

本書を読んで、ああそうか、と思いましたが、終始嘘ニュースを大真面目な雰囲気で報道して、ツッコミ役の芸人だけが蚊帳の外に置かれていく形式のバラエティ「全力!脱力タイムズ」もフェイクドキュメンタリーにあたるそうです。そう言われれば、そうですね。

思えば、昔の「川口浩探検隊」シリーズなども、今の観点からするとフェイクドキュメンタリーですよね。
当時は「ヤラセ」と言われてましたが。

あと最近だと「このテープもってないですか?」も傑作でした。バブル時代に放送された深夜番組「坂谷一郎のミッドナイトパラダイス」のビデオテープが見つかったので放送する、という形ながら、だんだんと不気味な方向に話が進んでいく番組。もちろん「ミッドナイトパラダイス」も架空の番組です。BSテレ東で放送され(あ、地上波じゃないけど)、TVerで話題になった作品です。

そういえばバラエティ番組も地上波ではコンプラが厳しくなって制約が多くなり、昔なら放送できたような番組が今では絶対無理、という番組が多くなってるそうです。攻めたバラエティも配信でしか観られない番組が増えている中、実は残された可能性の一つが「フェイクドキュメンタリー」ではないかな、と思います。『フェイクドキュメンタリーの時代』がそれを示しているように思えてなりません。

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