おすすめの本RECOMMEND

KEIBUNSHA

いつか読書をする人へ

いつか読書をする人へ

井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2024/10/30 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

恋とか愛とかやさしさなら

著者:一穂ミチ

出版社:小学館

ショッピングサイト
恋とか愛とかやさしさなら

5年間付き合った恋人にプロポーズされた。
そしてその翌日、その恋人が盗撮で捕まった。

すべてを捧げ、尽くし、差し出したい。
なにもかも、一滴残らず奪い尽くしたい。
一生残るように痕を刻み付けたい。
理解したい。
わからせたい。
元を取りたい。

人を愛する、その数多のやりかたは、なんなら全部間違っている。

きっと、愛が通じ合った瞬間にお互いの心臓をひと突きにするのが一番正解なような気がします。ケーキカットみたいに。最初で最後のふたりの共同作業。体に指一本触れる前に、心臓を捧げ奪い合うの。
こんなのぜんぜん潔癖でもなんでもない。
ごく普通の感覚だと思っています。
そんなハッピーエンドを迎えられないから、わたしたちは長きにわたって間違い続けるしかない。

本当はこんなことしたくないのに。
自分の暗い心の中を覗き込むと、同じように覗き込む相手の顔が見えるような気がします。
ほんの一瞬、なにかがわかるような気がしました。

この物語にある、さまざまな間違いが苦しくて愛おしいです。
もしかしたら、自分を赦せそうな気すらしてきます。



おすすめの本一覧へ