ホットミルクを飲んだようにホンワカ心温まる読後感。
しかし甘く見ると火傷する、そんな優しさと後悔が共存する連作小説。

　舞台は横浜市郊外の総合病院。
その長期療養型病棟に5年勤務する卯月咲笑（うづき・さえ）が主人公だ。
ナースの毎日の仕事が細かな描写で目に浮かび、端々にでる医療用語にも丁寧な説明がありわかりやすい。
というのも著者が13年看護師として働いていたというから納得だ。
私も入院の経験があるが、不安で心細い気持ちの時に看護師の存在がどれだけ支えとなり心強かったことか。
いまだに感謝している。

この小説の肝は、卯月がある時から患者の思い残している人物が視えるというところ。
患者の心残りを秘密裏に推理し解消しつつ、自分の心も救われて成長していく。

この小説の第2弾が11月上旬に発売決定！悩みを独り抱えがちな卯月に相談できる友人ができたり、退職した同僚の後日談だったり、実に興味深い内容。
卯月の活躍を見守りたい。