『告白』や『母性』などの映像化も多い尾道・因島出身の人気ミステリ作家、湊さんの最新作。

育ててくれた恩人である叔母の様子を見に帰省した主人公を迎えたのは、大量の未開封の宅配物に荒れはてた庭。

かつては薔薇の花でアーチを作るほどの手の込んだ庭だったのに…今はゴミを貯めた袋が片付けられないままの状態で放置されている。

しかしそのゴミに見えた物の本当の正体や、もう使っていない二階に設置された個人宅には不釣り合いな大型金庫の謎。

すべての謎の繋がりが見えてくると、これは介護の果ての不幸ではなく、人が生きて行く上で避けることのできない道であって、最終的に人間に必要なのは「人とのつながり」なのだと改めて痛感させられる、余韻の残る物語。

バッハの『Ｇ線上のアリア』でなく『Ⅽ』である謎を、ぜひ繙いてお確かめください。